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PS5とXbox Series S/Xから考える、サービスとアーキテクチャの関係(2/2 ページ)

» 2020年11月19日 09時01分 公開
[西田宗千佳ITmedia]
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仮想マシンで互換を実現するXbox S/X

 一方でXbox S/Xは、PS5に比べ、互換対応のソフト供給が大変なようだ。それは、PS5が「PS4をそのまま動かす」ためのハードウェアに近い構造をとなっているのに対し、Xbox S/Xが「仮想マシンによる互換レイヤーで、ハードウェア依存性を下げて対応する」モデルになっているからだ。具体的には、OS上にHyper-Vの仮想マシンが用意され、その上で互換レイヤーを動かす。

photo Xbox Series X

 利点は、ハードウェア依存度が低く、ゲーム機が世代をまたいだり、ハードウェアに変更が加わったりしても、互換維持を実現しやすいというところだ。そのため、Xbox 360を含めた過去のXboxからの互換性を保ち、古いソフトを動かせる。PS5は結局PS4のゲームしか動かない。今後対応の可能性もあるが、「過去のものを今のクオリティで遊べる」のはXboxシリーズの美点である。

 欠点は、互換対応の検証や修正が重くなりやすいこと、そして、ゲーム機内で動くOSレイヤーが厚くなり、ゲームそのものに割けるリソースが減りやすいことだ。ハードの会社であるソニーと、ソフトの会社であるMicrosoft……というのは、少しシンプル化しすぎだろうか。

 MicrosoftはXbox One世代でPS4の後塵(じん)を拝した。Xbox Oneを売り続けることに拘るよりも、新世代でビジネス環境を変える方が望ましい。もちろん、Xbox Oneや、それ以前のXbox 360などとの互換性は重要だし、ファンも維持する必要がある。

 今回、MicrosoftはXbox Series Sという廉価モデルを用意した。筆者は構造が気になったのであえてこちらを買ったが、性能はPS5やXbox Series Xほど高くない。だが、安価で小さいのはメリットだ。一方、これだけハードウェア構成が違うモデルを用意すると、実質的には「2つのゲーム機をローンチしている」ような部分もある。ソフトウェアレイヤーでの調整と、開発支援キット上での支援が欠かせない。

photo 廉価モデルのXbox Series S

 互換レイヤーなどのソフト部分を厚くしているのも、「ハードウェアのバリエーション」を増やすことを想定してのものかもしれない。

 また、Xboxのネットサービス「Xbox Live」には「Xbox Game Pass」という、ゲームの定額制遊び放題サービスも用意されている。こちらを使えば、同じゲームの一部がXboxでもPCでも遊べる。

 ネットワークサービスをより厚くし、さらに、PCまで含めた多数のハードウェアを「Xbox」ブランドとしてまとめるのがMicrosoftの戦略である。Xbox S/Xというハードウェアを軽視したわけではないが、単体での魅力以上にサービス連携の魅力を重視したのが、ハードウェア構成からも感じられる。

親近感は「プラットフォーム設計」が醸成する

 このように、両者は意外と異なっている。

 ビジネスモデル的にはSIEの方が保守的であり、Microsoftの方が攻めているようにも思える。まあ、「負けている側が積極的になる」のは当然のことともいえるのだが。

 購入を考える場合には、「テレビ+ゲーム機」を軸にするPS5か、「PCまで含めた複合的な市場」を考えるMicrosoftか、という見方をする必要はあるだろう。

 もちろん、単に好みで選んでもいい。プラットフォームに対する思い入れは親近感は重要だ。そしてある意味、それをどう醸成するのかも、ハードウェアやプラットフォーム設計の仕事である。

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