店舗のDXを実現するため、力を入れたのがグループ初となるスマホアプリの開発だ。モバイルオーダーシステムなどを開発するOkage(東京都中央区)と連携し、一から開発した。
アプリの使い方は簡単だ。アプリを起動するとGPSで現在地を計測し、店舗のリンクが表示される。メニューは1画面に1メニューごと表示され、左右へスワイプすると商品が切り替わる。ソースの種類などカスタマイズ項目を選択し、アプリ上で支払いを行う。後は提供時間に店舗へ行き、ロッカーにはいっている袋を受け取ればいい。
2度目以降は、注文履歴を基におすすめメニューを表示。見る度にメニューの表示順が異なるUI/UXはキャッチーだ。アプリからどのメニューに人気が集中しているかデータを取得し、商品の在庫情報とも連動している。
ただ、すでにアプリの課題も見えてきた。オープンして約1週間後のタイミングに取材をしたが、客の中には午前11時に注文し午後2時に商品を取りに来るケースもあったという。これでは商品は冷めきってしまい、バーガーのおいしさを提供できなくなってしまう。
そのためアプリのアップデートでは、客が受け取り時間を指定する機能の追加を考えている。また注文や在庫管理だけではなく、スタッフの勤怠情報ともアプリを連動させ、より効率的な在庫発注や人員配置ができるような仕様を検討しているという。
中目黒の店舗は広いキッチンスペースを持った店舗ゆえ、同時に多くのスタッフが働ける設計になっている。今後展開する直営店やフランチャイズ店では敷地面積は10坪から、スタッフ数も2〜3人で運営できるようなビジネスモデルを組んでいる。
それを実現するには、キッチン業務の効率化も外せない。厨房には商品の在庫管理や発注、注文の受け受け、調理時間の確認などを行えるキッチンディスプレイを設置。商品提供までの工程を効率化している。また洗わなくても安全な無洗レタスを仕入れるなど、従来のグルメバーガーショップと比較して負担の低いオペレーションを目指しているという。
商品サイズの、適度なサイズ感も生きるのかもしれない。いわゆるグルメバーガーは、1つでお腹が一杯になるほどのボリュームがあるものも多い。作り上げるまでに時間がかかるため、客の回転率を上げにくい。しかしブルースターバーガーは、大手ハンバーガーチェーンのハンバーガーと同じくらいのサイズで作りやすそうだ。
手頃なサイズは老若男女問わず食べやすいものでもある。実際に客層は高校生からシニアまで多岐にわたり、家族用に買っていく人や会社の差し入れに数十個を注文する人もいるという。
ブルースターバーガーが目指すのは、通信網とセンサーが隅々まで行き届いた世界における新しいハンバーガーショップだ。「最終的な利益を追求すると、スナックくらいまでサービスを提供するか、商品の提供に特化するか、極端な店舗形態にした方がいいと思いました。そこでテクノロジーを活用し、商品提供に特化することにしたのです」と西山さんは語る。
アプリの活用や店舗で現金を扱わないようにすることで人件費や家賃を削減し、その分のリソースを商品へ投資する――ブルースターバーガーに限らず外食産業ではITの活用が進んでいるが、商品へ還元できているところは多くはないだろう。
「僕はもともとIT企業でインターンをしており、父(ダイニングイノベーショングループ創業者の西山知義氏)が手掛ける飲食業にあまり興味はありませんでした」と西山さん。「しかし父から中国・深センのカフェチェーンはアプリ注文・電子決済が当たり前だという話を聞いたとき、車の世界であればTeslaのようにテクノロジーと他の業界の融合がイノベーションになるだろうと思いました。このアプローチであれば自分の強みを生かせると考えたのです」と続ける。
実は現役の大学生でもある西山さん。ブルースターバーガージャパンの設立前は、修行として複数のハンバーガーチェーンの現場でも働いた。自身のIT企業での知見とダイニングイノベーショングループの力が重なり、新しい取り組みも果敢にチャレンジできるのだろう。もしかしたら西山氏の存在そのものがフードテックの1つであり、業態のスクラップ&ビルドにつながるのかもしれない、という思いも抱いた。
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