携帯電話を購入する際、価格表や広告などに書かれた「頭金」の2文字が気になった経験がある人は多いのではないだろうか。
頭金といえば、一般的には「分割払いで購入する商品の価格」のうち、一部をあらかじめ支払うときの金額を指す。だから、本来は頭金を支払えるほどのキャッシュもないような場合を除けば、頭金の安い店舗を探す必要はないはずだ。
しかし、2020年11月に総務省と消費者庁が、携帯電話業界における“頭金”について「消費者に誤認を与える」として注意を呼び掛けた他、携帯キャリア各社や販売代理店などにも是正を求めると発表した。
この記事では、携帯電話における“頭金”とは何か、そしてなぜ独自の“頭金”という仕組みが生まれたのかを解説していく。
まず、一般的にイメージされる頭金を振り返ってみる。
例えば200万円の自動車を購入する際、これを5年間で分割すると毎月3万円強の支払いになる。この際、購入時にいくらかあらかじめ支払うことで、月々の支払いを抑えるのが本来の頭金だ。
もし200万円のうち、60万円を頭金として購入時に支払えば、残りの140万円を分割した額を月々支払っていくことになる。
しかし、携帯電話の“頭金”の仕組みはこの通りではない。
例えばドコモオンラインショップでの「iPhone 12」64GBモデルの販売価格は10万1376円だ。
これに対し、ある街中の販売店では11万2376円と値付けされている。そしてプライスカードには「頭金1万1000円」との表記も。ドコモオンラインショップでも街中の販売店でも、月々の支払い額は同じ2816円の36回払いである点にも注目だ。
もし“頭金”が一般的な頭金であるならば、街中の販売店で購入した場合は月々の支払い額がドコモオンラインショップで購入するよりも安くなるはずだ。
しかし支払い総額を見れば分かる通り、頭金として記載された「1万1000円」は販売店が上乗せした金額だ。携帯電話における“頭金”とは、携帯電話事業者の販売価格に対し代理店・販売店が「上乗せした分」であり、この上乗せ分は販売店の利益になっているのだ。
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