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「子供がゲームより夢中になる」──PFNの教材を使ったプログラミング教室の魅力を探る(1/2 ページ)

» 2021年01月07日 16時00分 公開
[迎悟ITmedia]

 2020年度、小学校でのプログラミング教育が必修化した。子を持つ親はもちろん、プログラミングの経験者や今もIT業界に身を置く人なら、その内容はかなり気になるところだろう。

 筆者も小学生の娘を持つ親であり、学生時代には情報系の学科でプログラミングを学び、現在もプログラムを仕事で書くことが多い。わが子が受けるプログラミング教育とはいかなるものやと、期待半分不安半分で関心を持っている。

 しかし、2020年は新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、授業参観など学校へ保護者が赴く行事は軒並み中止になってしまった。一方では、自宅のポストに近所の学習塾から「プログラミング教育必修化対応」をうたう案内が届くことも珍しくない。

 そんな中、AIベンチャーのPreferred Networks(PFN)と、全国に学習塾を展開するやる気スイッチグループが、プログラミング教室「HALLO powered by Playgram x やる気スイッチ」を2020年8月に開校した。

 PFNといえば、AIフレームワーク「Chainer」(チェイナ―)の開発などで知られる気鋭のAIエンジニア集団だ。彼らが作るプログラミング教材「Playgram」(プレイグラム)にはどんな特徴があるのか? それを使って学ぶ子供たちの反応は? 1人の親として、実際の授業を見学してその価値を確かめてきた。

コミカルなキャラたちが動き回る“イマドキ”の画面 Pythonへのステップアップも

 まずは授業で使われている教材、Playgramの概要を見ていこう。

Playgramで命令ブロックを組み立てる画面

 Playgramでは命令の書かれたブロックをつなげることで、サンドボックスゲーム内のキャラクターを思い通りに動かせる。

 課題ではキャラクターの動きを再現するように命令ブロックを組む。イマドキのスマートフォンゲームやゲームコンソールのタイトルのようなコミカルなキャラクターたちが動き回るさまは大人でも見ていて楽しめる。

 また、次の動作を命令ブロックから選択してつなぐのは他のプログラミング教材と基本的には同じだが、このブロックにも工夫がいくつもある。

 最初の時点では「まえへすすむ」や「みぎにまがる」といった日本語の言葉での指示が描かれたブロックを選択していくのだが、慣れてくると表示モードを切り替え「Pythonモード」とし、実際のプログラムコードが書かれたブロックを選択できるようになる。

表示モードを切り替えてPythonでコーディングを行うテキストモードにも移行できる

 さらにブロックに書かれたプログラミングコードにも見慣れ「まえへすすむ」など命令のコードも分かってくると、次は実際にプログラムのコーディングを行う「テキストモード」に変更することもできるのだ。

 プログラミング教育の目的である「論理的思考の育成」として考えた場合は、最初のブロックを組み合わせるだけでも十分だろう。しかしディープラーニングなどAI開発に長けたPFNらしく、機械学習の分野で注目度の高いPythonを読み書きできるAIエンジニアへの教育にステップアップしていける作りになっているのは面白い。Playgramは「小学生から始めるプログラミング教材」という位置付けではあるが、Pythonを学びたい大人向けにも十分通用しそうなコンテンツになっていると感じた。

「動く」「動かない」だけじゃない クリア点数の競争や助け合いも

教室の風景

 今回見学させてもらった授業は小学生の男児4人のクラスだ。授業開始前の時点で、先週の課題や自己学習での進行具合について子供同士や講師に「ここまで進んだ」といったアピールをしている点が微笑ましい。筆者も1人の親であり、かつては小学生だったことを考えると、こうした報告は「昨日、ゲームでここまで進んだんだぞ」と友人にアピールするのにとてもよく似ているように思う。

 Playgramの完成度の高さは、単に宿題としてプログラミング課題が渡されるのではなく、進行具合や理解度を周りにアピールしたくなる要素が多数詰め込まれている点が挙げられる。

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