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» 2021年02月26日 11時10分 公開

台風の雲をリアルに再現、直感操作も KAUSTやGoogleなど「Stormscapes」開発Innovative Tech

メソサイクロンやスーパーセルのような、積乱雲の発達過程をリアルに描画する。

[山下裕毅,ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 サウジアラビアのキング・アブドゥッラー科学技術大学(KAUST)、ポーランドのアダム・ミツキェヴィチ大学(UAM)、米GoogleのAI部門による研究チームが開発した「Stormscapes」は、浮力と気圧を正確に計算した雲の物理シミュレーションを作成するフレームワークだ。さまざまな雲の種類をリアルに再現し、その動きをインタラクティブに操作できる。

photo 異なるタイプのスーパーセルをシミュレーション

 リアルな雲を再現することは、天気予報においてのシミュレーションはもちろん、ゲームや映画においても重要な役割を果たす。しかし再現できる種類は限られており、特に積乱雲などの複雑な動きを伴う気象現象を正確にシミュレーションするのは困難だ。

 今回の手法は、さまざまな雲の種類とその遷移、雷雨や嵐にみるメソサイクロンやスーパーセルのような動的現象を正確に再現する。

 これらのシミュレーションを可能にするために、浮力と温度分布の新しいアルゴリズムを導入。浮力は大気中の密度の変化を、温度分布は温度勾配の変化を考慮している。

 これにより大気密度と温度勾配の変化をシミュレーションできるようになり、異なるタイプの巨大な積乱雲やケルビン・ヘルムホルツ不安定性を伴った雲の動きなど、複雑な気象シミュレーションを実現する。

photo 積雲から出現した積乱雲の時間的遷移

 また、ユーザーが直感的に雲を操作できるように、気象シナリオを決定するパラメーターも作成した。これには地上の湿度により雲の基底高度が決まり、大気の温度変化によって雲の頂高度が独立して制御される仕組みを利用している。こうして実際の地図データから得た地形上で雲をインタラクティブに制御できる。

photo 実際の地形データを参照にリアルな雲の動きを再現している

 

photo 積乱雲によるアルプス上空の大雨

 実際の気象データを使用して雲の様子をシミュレーションすることも可能だ。

photo 実際の気象データを使用して、現実的な雲の形成をシミュレーションした様子

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