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» 2021年03月31日 19時36分 公開

VRで会議してみたら、仕事とオフィスの未来がそこにあったリモートワーク時代のライフハック術(1/2 ページ)

VRChatで1冊の本を作り上げた経験から得られたこと。

[堀正岳,ITmedia]

 新型コロナウイルスのパンデミックに伴い、自宅や出先から仕事場に接続するリモートワークがある程度定着してきました。

 この1年で、ZoomやGoogle Meetを使ってビデオ会議をし、離れたメンバーと意思疎通をするのに慣れてきた人も多いでしょう。

 しかしビデオ会議はどこか味気なく、実際に人と会っている感覚が足りないのも事実です。情報を伝達し、最低限の議論をするのには事足りています。それでも顔を合わせているのに距離を感じてしまう、“冷たい”メディアだと感じている人も多いのではないでしょうか。

 そこで提案したいのが、ちょっと極端ではあるものの、未来を感じさせるVRを使った仮想空間内のミーティングです。そこには意外な実用性もあるのです。

VRChatで共著者たちがミーティング

 ここしばらく私は共著者らとともにVRについての書籍を執筆していましたが、リアルで集まることが難しい緊急事態宣言下で作業していましたので、ミーティングもたびたびVR上で行いました。

 使用したのは「VRChat」という、いま人気のソーシャルVRサービスですが、このサービスは遊びを主目的とした場ですので、ミーティングといってもその見た目はなかなかに奇抜です。

photo ピクニックをしているように見えるものの、VRChatでミーティングをしている

 参加しているメンバーは思い思いのアバターを身にまとっていますので、その姿は動物であったり実際の性別とは逆の美少女であったりします。利用する空間は花があふれる広大なワールドの一角であったり、居酒屋を再現した空間だったりと、ミーティングという言葉に似合わず混沌としています。

 しかし何度か繰り返すうちに、一見遊んでいるようにしか見えないVR内でのミーティングが意外にはかどり、満足度が高いことに気付きました。それにはいくつかの理由があります。

 1つ目に、VRだからこそ表現できるメンバー同士の距離感があります。

 VRChatを含む多くのVRサービスでは、VR空間内で近くにいるユーザーの声は大きく聞こえ、離れた場所にいる人の音声は小さく聞こえるといった、現実と同じ距離感が表現されています。たったこれだけのことで、お互いの存在感が強まって場所をともにしてミーティングを行っている一体感が強くなるのです。

 Zoomなどのビデオ会議の場合、皆が正面を向いてタイル状の映像の中でお互いの顔が見えることが最初は新鮮でしたし、距離感が近づいたように思えました。

 しかし、よくよく考えると私たちはミーティングのあいだずっと相手の顔や表情に注目しているわけではありません。むしろ私たちは相手の存在感や雰囲気をどこかで感じ取りつつ、目は資料に落としたり、スクリーンを見ていたのが実際のミーティングです。

 VRChatでミーティングを行う場合、これと似たような現象が生まれます。相手のアバターは空間内を自由に動いていますし、声が聞こえてくる方向や大きさといったものもリアリティーをもって表現されているので、これが相手がおなじ空間内で場所を共有しているという存在感につながります。

 会議をしている相手の存在感が感じられるからこそ、ビデオ会議につきものの冷たさがVRミーティングでは大きく改善されるのです。

非言語コミュニケーションが成否を分ける

 VRでミーティングを行うもう1つの利点として、アバターの身振り手振りといった「非言語コミュニケーション」が促進される側面があります。

 例えば「それはそれ、これはこれ」と身振りで会話の流れを表現してみたり、相手がしゃべっている最中に手を突き出して異論があることを表現したりといったように、活発な会話において非言語コミュニケーションが占める役割は重要です。

 1960年代にアルバート・メラビアン教授が発見した有名な「メラビアンの法則」によれば、感情や態度について矛盾した容易に解釈できないメッセージについて、私たちは言語情報からは7%、口調や声色といった聴覚情報からは38%、そして身振りなどの視覚情報からはなんと55%も意味を補完していることが知られています。

photo VRなら非言語コミュニケーションが使える

 意味が伝わりにくい難しい話題であればあるほど、私たちは会話においてそれが言葉だけで伝わるのではなく、非言語コミュニケーションで細かいニュアンスが伝わることを前提にしていると言い換えてもいいでしょう。テレビ会議に独特のもどかしさは、この要素が欠落しがちになるためともいえます。

 これがVR内ならば、手を振って相手の言葉を打ち消したり、VR空間内に投影した映像を指で指し示したり、身振りだけで相手に話を促したりといったように、他の会議システムでは難しいコミュニケーションを自然に成立させることができます。複雑な表情はまだ表現できないものの、声色と身振りだけでも、会話の質は大きく改善します。

 相手の存在感を感じられる、濃密なコミュニケーションを可能にするといった、デジタルが苦手とした分野における可能性がVRミーティングにはあるのです。

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