VRがすぐにZoomといったテレビ会議サービスと同じようにメジャー化するわけではないものの、最近のさまざまな新しい動きは、やがて会議だけでなくオフィスやイベントといったものがVR化してゆく未来を指し示しています。
全員がOculus Questなどのようなヘッドマウントディスプレイをもっているわけではないので、PCのWebブラウザやスマートフォンのアプリから接続する人も全員集まることができる仮想オフィスやミーティングスペースが開発されています。
「Spacial」は、通常のビデオ会議システムのように接続しているメンバーと、VRからログインしているメンバーを実際のオフィスや仮想空間内に浮かんだ映像として集合させて、Microsoft HoloLensやOculus Questで体験できるようにしてくれます。
この仮想空間内では3Dのオブジェクトを自由に追加し、実際の物体と同じように手に持ったり、拡大させて表示させたりといったことが可能ですので、製品開発などのクリエイティブな仕事のミーティングでも活用できます。
こうした本格的なサービスが普及するまでは、VRChatのような既成のVRサービスを応用することが考えられますが、遊びの雰囲気を持ち込まないために作られたVRワールドも存在しますので、これを利用するといいでしょう。実際、書籍を執筆していた著者たちはミーティング用のオフィスのVRワールドを作成して、そこで会うようにしています。
遊び心が多いために仕事に向かないVRChatのアバターですが、「ReadyPlayerMe」のようなサービスを使えば、写真からある程度本人に似せたリアリティーのあるアバターを作成することもできます。仲間内のミーティングだけでなく、初対面の人との打ち合わせなどがVRで始まるにつれて、TPOをわきまえてアバターを使い分けていく未来も見えてきます。
ここまでは、こぢんまりとしたミーティングだけを想定していましたが、もっと大規模な、大勢の人があつまる学会のようなものや、展示会といったイベントをVR空間内で行うこともこの1年で注目されています。
すでにバーチャルマーケットやクロスマーケットといったVRアバターや3Dモデルを販売するVR即売会が注目されていますが、まだまだ技術上の制限があるために、一つのVRワールドに滞在できるユーザー数は数十人が限度です。
そこで、イベントで提供したい映像はYouTubeなどのような外部サービスからVR空間内に投影して、数十人ごとのVR空間の「インスタンス」と呼ばれるコピーを作成して、大勢の参加者をさばく方法も確立しつつあります。
新型コロナウイルスの脅威は、当面まだまだ続きます。そしてこのパンデミックが終わった後も、リアルなオフィスを縮小してリモートワークに移行した流れは止まりそうにありません。
リモートで仕事をするメンバーが今後も一定数いることを前提として、オフィスを計画的に縮小している会社の話題を最近よく聞くようになりましたが、オフィスの仮想化やVR化という未来が水面下で発達しつつあることを知っていれば、それをネガティブなニュースと受け取る必要はありません。
VRでミーティングを開くのは現状では奇妙に見えるかもしれません。しかしそれは未来のオフィスを先取りした投資ともいえるのです。
本稿で触れた以上の詳細な話題は拙著、「未来ビジネス図解 仮想空間とVR」にまとめましたので、ぜひご覧いただければと思います。
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