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Apple Musicの“追加料金無しでハイレゾ提供”が楽曲販売に与えるインパクト インディーレーベル運営者の視点(3/4 ページ)

» 2021年05月18日 17時13分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

Bluetoothイヤフォンならハイレゾに意味ない?

 今回、ハイレゾとイマーシブオーディオに対応ということだが、リスナーとしての筆者は、ハイレゾ対応に大きな意味を見出せない。というのは、iPhoneで音楽を聴くときは、基本的にAirPods Proで聴いているからだ。AirPodsやPowerbeats ProといったAppleのBluetooth接続のイヤフォン・ヘッドフォンは、元の音源がハイレゾであってもロッシー(AAC)変換された音を聴くことになる。

 ハイレゾをハイレゾとして楽しみたければ、有線のイヤフォンか、専用のDACを用意する必要がある。どちらにしても、有線接続が前提になるわけで、AirPods Proで完全ワイヤレスの利便性が身体に染みついた今となっては、有線への「退化」は受け入れることができない。いい音か、利便性か、問われたら躊躇(ちゅうちょ)なく利便性をとる。したがって、Apple Musicのハイレゾは、こだわりをもったマニア向けという位置付けだと認識している。

 あえて言えば、macOSの「ミュージック」アプリとハイレゾに対応したオーディオインターフェースという組み合わせで聴くようなシチュエーションならばハイレゾの意味を見いだすことはできそうだ。もちろん、それはそれで楽しみだが、利用頻度としてはそれほど多くはない。

 その一方で、イマーシブオーディオには期待したい。数あるイマーシブオーディオの中から、Dolby Atmos方式に対応しているそうだ。ただ、Dolby Atmosは、映画など映像とセットになったコンテンツに対し、上左右前後の音源の定位を駆使することで、没入感を演出する。いわゆるオブジェクトベースというやつだ。そのようなフォーマットを音楽の世界でどのように表現するのか、制作者のセンスが問われるのではないか。

 例えば、アコースティックな楽器をホールで録音する際、上左右前後にマイクを設置し、ホールで鳴っている音のありのままをキャプチャーするというナチュラル指向の考え方もあれば、オブジェクトベースの利点を生かし、楽器の音を好きな位置に配置したり、縦横無尽に動かすといった考え方もあるだろう。

photo ホールでの収録風景

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