ITmedia NEWS >

中国でここまで進んでいる「ブロックチェーンECセール」とは何か(2/3 ページ)

» 2021年06月18日 16時20分 公開
[山谷剛史ITmedia]

ブロックチェーンを活用し、デザインを開放

 5月17日、「アントチェーン」は「文昌星伝統文化換新計画」という計画を発表した。アントチェーンは、アリババ系のアリペイ(支付宝)をリリースする企業「アントグループ」のブロックチェーン部門。この計画はブロックチェーンを活用したもので、1000の中国の伝統的な文様やコンテンツを天猫の「IPMart」で無料でデザイナーに開放し、各ショップはそれを任意で使って商品化できるようになる。これを靴下ショップのPrimeetは活用したわけだ。

photo アリババグループのブロックチェーン部門、アントチェーン

 このアントチェーンの文昌星伝統文化換新計画を実現した天猫のIPMartは、中国では「IPのニューリテール」と報じられている。ブロックチェーンを活用して気に入ったデザインの利用権利を高額で購入するのではなく、売れた数だけ版権利用代を支払うということが実現できるプラットフォームだ。

photo IPMart

 例えば気に入ったデザインを見つけたとして、そのデザインを活用したバッグなり服なりを販売すると、売れた分だけリアルタイムで版権保有者に支払われる。IPmartは3月にスタートし、そこから2カ月で150のIP所有者が参加した。そのうち7割が中国とあるので、海外からの参加も少なからずあるのだろう。天猫は将来、中国から500以上のIPを育てたいとしている。

 現在中国らしいデザインやメイドインチャイナの製品が若者に受けている「国潮ブーム」があり、中国らしさを押し出したデザインの製品ばかりが続々と登場している。

 加えてライブコマース人気の掛け算もあいまって、中国の愛国心を鼓舞する伝統的デザインが飛ぶように売れる。販売店はアントチェーンのデザインをIP利用の手間を掛けず利用でき、魅力的な製品を必要な数だけ製造して販売することができる。

 天猫は消費者と販売店を呼び込み、他のECサイトと差別化することができ優位に立てる。ブロックチェーンを活用したIP販売は、消費者、店舗、プラットフォームそれぞれにメリットをもたらしたわけだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.