発表直後に公開したいくつかの記事でも書いたのだが、Windows 11に伴う大きな変化のうちの1つが「Microsoft Storeの刷新」だ。
Appleの「App Store」やGoogleの「Google Play Store」に比べ、WindowsでのMicrosoft Store利用率は極めて低い。App StoreやGoogle Playを暇な時に眺めるという人はいても、Microsoft Storeを見ている、という人は少ないのではないだろうか。
Microsoft Storeの前身であるWindows Storeが登場したのは2012年、すなわちWindows 8の頃だ。AppleとGoogleの勢いに対抗するための施策だったが、うまくいかなかった。8年前のボタンの掛け違えをずっと、Microsoftは引きずり続けてきたのだ。
PCが「めんどくさい」といわれる点はアプリの配布とアップデートモデルにある。ストアが機能していなかったので、それぞれバラバラな場所から入手し、アップデートもバラバラだった。そこには、マルウェアを配布する偽サイトの入り込む余地も大きくなる。
PCにストアモデルは馴染まない……といわれつづけてきたのだが、ゲームはもはやストアモデル全盛。Steamを中心に複数が競合している。AppleはApp Storeの成功をMacにも持ち込み、少々強引なところがあるものの、「Macでもアプリはストアから配布する」形を定着させようとしている。
Microsoftはこのタイミングで、8年間の課題解消に乗り出す。「ちゃんとあらゆるアプリを配布可能にする」ことで、Microsoft Storeを使ってもらえる可能性を高めようとしているのだ。
次の画像は、デベロッパー向けに公開されたMicrosoftのプレゼン動画からの抜粋である。「EXE」ファイルがそのまま公開可能になり、Web技術を使ったアプリである「PWA」の配布サポートも行われている。
Windows 11ではAndroidアプリが動くようになることが注目されているが、別な見方をすれば、あれも「Microsoft Storeの魅力を高める」方法論である。
そして、「自分たちで決済を用意できるならMicrosoftは利用料を取らない」というのも、デベロッパーを引き付ける方策である。そもそもPCはそういう存在だったので、いきなり「プラットフォーム利用料をいただきます」といわれても……という企業はあっただろう。
実際問題、こうしたことはもっと早く行われているべきだった。今回は「ようやく」という印象が強い。もしかすると、Apple対Epic Gamesの訴訟が始まり、「プラットフォーム利用料と管理の在り方」についての議論が盛り上がったことが影響しているのかもしれない。
Microsoftはスマートフォンでもスマートフォン用アプリケーションの市場でも勝てなかった。一方、PCの価値は失われず、結局コロナ禍でより強くなった。
だとするならば、PCというビジネスの価値をさらに高め、「めんどくさい」という課題を解決していくことは、PCの価値をさらに高め、Microsoftの課題であった「ストアビジネスでの存在感」を高めることにもつながる。
だからこそ、この機能はWindows 11のコア機能でありつつ、Windows 10にも提供される。その方がMicrosoftにとっても、デベロッパーにとっても、そしてユーザーにとってもプラスだ。
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