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表裏に同時投影できるスクリーン NTTドコモの「ヤヌスの投影」Innovative Tech

» 2021年07月20日 13時49分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 NTTドコモの研究チームが開発した「Janus Screen」は、プロジェクターから投影したスクリーンの裏面にも同時に映し出すシステムだ。一方向から投影するだけで、前面のみ、背面のみ、両面に同じ画像、両面に異なる画像の4つの方法で投影が行える。

photo 左側が前面スクリーン、右側が背面スクリーン、片面もしくは両面同時に異なる画像を投影できる

 これまでもプロジェクターからの片面投影で両面に画像を映し出すアプローチは研究されてきたが、両面に同じ画像を投影する方法しかできなかった。今回のシステムは両面に異なる画像を映し出せる。

 システムは、偏光板付きプロジェクター2台(水平偏光板と垂直偏光板)と、多層スクリーン(水平偏光板、不透明板、右円偏光板、半透明背面スクリーンの4層)で構成。水平偏光板と不透明板には多数の穴が格子状に開けられている。

 1台目の水平偏光板付きプロジェクターからの投影は、2層目の不透明板に反射し表面に画像が表示され、穴を通過した光は右円偏光板に吸収され裏面には届かない。2台目の垂直偏光板付きプロジェクターからの投影は、穴を通過した光だけが右円偏光板も通過して半透明背景スクリーンに反射し裏面へ画像が表示される。

 これによって水平偏光板付きプロジェクターは表面のみに、垂直偏光板付きプロジェクターは裏面のみに画像が投影できる。

photo 提案システムの仕組み

 プロトタイプのスクリーンサイズは、150(幅)×100(高さ)×5mm(奥行き)。水平偏光板と不透明板に1.5mmの穴を3mm間隔で開けて作成した。プロトタイプに投影した結果、表面には葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」、裏面には「凱風快晴」という異なる画像を投影することに成功した。前面と背面の投影を選択的に切り替える、同時投影でも混ざり合わない画像の投影を実証したとしている。

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