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» 2021年08月12日 16時25分 公開

「コロナ禍からの脱却」はなぜ難しいのか ソニーとJAL、2つの取材から考えた(1/2 ページ)

リアルな活動はしばらく抑制された状態が続くことになる。そんな中で企業はどう対応していくべきなのか。

[西田宗千佳,ITmedia]

 オリンピックも終わり、いよいよ新型コロナウイルスの感染爆発と真剣に対峙しないといけない状況になった。

 筆者は医療関連の専門家ではないので、感染対策をどうすべきか、といった話をする立場にはない。だが、ITや技術、製造、経済が絡む分野ならば話せるし、考えていることもある。

 今回は2つの取材中に考えたエピソードから、コロナ禍脱却の難しさについて、少し考えていきたい。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年8月9日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。さらにコンテンツを追加したnote版『小寺・西田のコラムビュッフェ』(月額980円・税込)もスタート。

ソニー決算から見えた「ビジネスとリアルのスピードギャップ」

 8月4日、ソニーグループの2021年度第1四半期決算発表を取材していた。資料を見ながら、「今回はまた、面白い内容になったな」と考えていた。

 今回ソニーの好調を押し上げたのは「エレクトロニクス」と「音楽」だった。特に「カメラ」と「広告による無料のストリーミングミュージックからの収入」が好調だった、というのが面白い。どちらも理由は「コロナの影響からの脱却」にある。

photo ソニーグループ2021年度第1四半期決算 セグメント別業績

 カメラはコロナ禍で一気に売れなくなったわけだが、欧米を中心にワクチン接種が進み始めたことで売れ行きが改善し始めているという。また、広告ベースのビジネスはコロナ禍での緊縮状態の影響を強く受けるものだが、「先が見えてきた」という状況から、広告出稿量の回復によって収益が改善している。

 もちろんそれだけが高収益の理由ではない。構造改革による収益体制の変化を除外すると見誤る部分がある。とはいえ、「コロナは終息に向かう」という感触が、市場に影響を与えていることを裏付けてもいる。

 一方、矛盾するような話もある。同じソニーグループの中でも「映画」はまだコロナの影響を脱していない。劇場公開作品はいまだに公開延期や、ネット配信への切り替えが起きている。ソニーグループ・代表執行役副社長兼CFOの十時裕樹氏はオンライン説明会の中で、「劇場の平常化が不透明な状況が続いている。再拡大の状況を読むのは難しいが、劇場のフルでの再稼働は難しいのではないか」と話す。

 映画産業の中心地である米国は、ワクチン接種の影響で急速に「ノーマル化」しつつあるといわれていたが、現在はいわゆるデルタ株の感染拡大に伴い、状況が不透明になってきている。

 特に厳しいと予想されているのがファミリー向け映画だ。「子ども連れ、家族で劇場に映画館に行くことへの抵抗感がまだある」(十時氏)との分析から、新作がネット配信に切り替わっている。

 これはすなわち「コロナからの脱却」の流れが世界的にまだ不透明である、という事実を示している。

 いつかは安定するだろうし、ビジネスにブレーキを踏んでばかりはいられない。コロナ終息後、もしくはコロナがインフルエンザのような「注意は必要だが日常的な感染症」に落ち着く日を想定して再加速する部分は必須だ。

 だが現実的な部分として、無制限に街中に出ていけてはいない。そうしないと「より安定した状況」にはならないし、人々の不安が払拭されたわけでも、感染によって苦しむ人がいなくなったわけでもない。影響を軽く見るのは文字通りの自殺行為であり、社会全体にとってマイナスだ。

 人々の活動に生じるタイムラグを考えると、「リアルに活動する部分での課題」と「先を見据えた期待を交えた活動」の両立をどうするのか、という課題が目前にあることを感じさせる。

 「コロナ禍では売れにくい」といわれた製品も、別にみんなが欲しがっていないわけではない。半導体不足の影響もあり、商品化点数は減速気味だし、人気商品は在庫不足で入荷待ち、ということもある。2021年後半も多数の新製品が出るし、その中にはヒットが確実視されているものもあるが、それらの順調な製造と供給が企業にとって大きな課題となるのは間違いない。

 一方、リアルな活動がまだしばらく抑制される関係上、その影響を受ける産業と、そうでない産業の差はより大きくなるだろう。この1年半で経済活動にブレーキが踏まれた結果、投資余力が小さくなっているからだ。リモートワークの徹底をはじめとした課題についても、それが可能な産業とそうでない産業のギャップが埋まらないままここまで進んでしまった。この課題を解決するための支援策を、政府は加速すべきだ。

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