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「メタバース×ブロックチェーン」の未来(前編) Thirdverseの國光CEOと話す、VRのその先(2/3 ページ)

» 2021年08月24日 16時59分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

――それはなぜですか?

國光氏 話題が続かないんですよ。新しい関係を築くには共通の話題が必要なんですけど、匿名で知り合った同士だと、なかなか難しい。

 結局リアルな友達が集まるところが強い。もともと知り合い同士なら、共通な話題がいくらでも見つかりますからね。だからFacebookもLINEもあんなに使われているんです。

 一方で、「バーチャルな友達同士のコミュニティー」が成立しているのは、ほとんどがゲームの中なんです。ゲームという共通の話題があり、共通の敵や共通の仲間意識があるから、つながりが維持できる。

――ああ、なるほど。「古典的なメタバースはMMO RPGだ」なんていわれますが、そこで強いつながりが生まれやすいのは……。

國光氏 同じゲームという、共通の目的があるから。

 そういうゲームが多数集まってつながりができれば、それは「メタバース化」していく、ということじゃないですか。

 リアルと別の人格で別のコミュニティー、という世界は大きな可能性を持っています。でも、そのためには共通の目的が必要なんです。この辺は鶏と卵、どちらが先か、という話に近いですね。

 もちろん、今後、FacebookやLINEのVR版のようなものも当然出てくると思いますよ。

photo Facebook Horizon

 ただそれらは、VR用HMDだけでなく、スマートフォンでもアクセスできるしARグラスでもできる、という感じになるでしょう。みんなとリアルに集まるとき、来れない友人はARから参加する……という「リアルなつながりを拡張するサービス」は確実に出てきますよ。

 ただ、そうでないものも必要ですからね。

 メタバースの世界は「Winner takes all」にはならないと思っているんですよ。

――複数の価値観で作られた世界が共存する、ということですか。

國光氏 そうそう。1つがすごいから他が消える、という形ではなく、複数のメタバースが存在しうるはずです。

 とはいえ、リアル型のものだけを見れば、どこかが寡占するんじゃないですかね。僕たちはそこにあまり興味がないですが。

メタバース時代は「VRネイティブ」からが本番

――一方で、そういう世界が成立するには「いかに長くバーチャルな世界で過ごせるか」ということが重要になります。今はハードウェアの制約も多く、長時間過ごせる人は限られている。やっぱり今は「全力で30分Beat Saberを遊んだ」という使い方になってしまう部分もあります。ハードウェア的な進化も必要にはなりますね。

國光氏 メガネくらいになって、もっと快適になり、解像度なんかも上がらないといけないでしょうね。その未来は100%来ると思っているので、その手前が今のOculus Quest 2というところでしょう。

――特にVR内での「移動」は、いろいろと発明が必要な領域です。「VR酔い」との戦いでもあるし、自分が実際に歩いて動き回れる範囲は限定されているので、リアルと同じ、とはいかない。

國光氏 VR初期はテレポート的な移動が中心になっていましたが、これが答えではありませんでした。これからも新しい何かが発明されることもあると思います。

 もちろん「バーチャルリアリティーである」からといって、現実を再現する必要はないと思うんですね。「1km先にある店に行く」ことをどう短縮するか、という話もあると思います。

 その上で「リアルに移動している感じを出す」VRならではの発明があったりするのかもしれません。

 一方、こうも思うんですよ。

 今話しているメタバースの世界は、われわれの世代の話ではないな、と。どこかのタイミングで「VRネイティブ」世代が出てくるはずです。

 僕らはまだいろいろな部分で試行錯誤をしていますが、それを乗り越えた世代になると、本格的なVRメタバースの世界が広がるんじゃないか、と思うんですよね。

 そもそもVRネイティブ世代になると、もう僕らのようにVRで酔ったりしなくなっているかもしれませんし。「漁師の息子は酔わない」みたいな話で。そうすると、移動の話だって前提が変わってきてしまう可能性もあります。

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