11月16日、バルミューダは自社開発スマートフォン「BALMUDA Phone」を発表した。
だが、SNSなどを見る限り、その内容を素直に喜んでいる人は少ないように見受けられる。筆者もその1人だ。では、なぜBALMUDA Phoneを物足りないと感じているのか、その点を分析してみよう。そこからは「スマホとはどのような製品なのか」ということが見えてくると思うからだ。
先に立場をはっきりさせておきたい。
今回、筆者はまだ製品を実際に見ておらず、触っていない。16日の発表会には参加を予定していたが、前日までの体調不良もあり、急遽参加を見合わせた。その関係で、結果的に情報については、ニュースリリースやリアルタイムでの関係者のツイート、発表後の記事、石川温氏がYouTubeで公開した発表会動画を見た上で書いている。触ったら180度話が変わる可能性を否定するものではない。
ただまあ、実機に触れ、質感や動作で好印象を持ったとしても、意見は変わらないと思う。というより、それらは「見る限り十分に良いだろう」と捉えた上で以下のような評価をしているからだ。
今回のBALMUDA Phoneについては、バルミューダのブランド価値を活かせていない、よくない商品だ。強い購入意欲を持つことはない。
なぜなのか? 「高い」「スペックが低い」といった意見が目立つが、それは現象の一部を切り出したものに過ぎない。
本質的な話をするならば、「バルミューダに求めていたものが欠けていた」からだろう。
バルミューダは、形にこだわった製品を作る一方、コアな変化を追加することで他の家電メーカーに対抗してきた。けっして多機能なわけではなく、コア機能一本勝負、といってもいい。
一番有名なのは「BALMUDA The Toaster」だろう。蒸気を併用しつつ温度コントロールを行うことで、パンの種別に合わせて美味しい焼き方ができる。筆者も使ったことがあるが、確かに「今までのトースターとは違う体験」を得られた。
では、BALMUDA Phoneはどうだろう?
普通のスマホにしか見えない。
もちろん、持ちやすいだろう。形もかっこいい。スケジュールアプリも使いやすく、呼び出しが楽なのだろうと思う。
だが、それはそんなに特別なことではないのだ。
スマホには多数のアプリがあって入れ替えられるし、形もいろいろある。
「今のスマホには選択肢がない」と、バルミューダの寺尾玄社長は話していたが、そこにはちょっと同意しかねる。バリエーションはあるが、価格や必要な機能などの課題もあり、選択に偏りが出やすいだけだ。
そもそも、なぜ市場にこれほどスマホケースがあるかというと、そこに個性を求めている人が多いからでもある。その市場価値を軽く見てはいけない。逆に、マイナーでケースの少ないスマホは「個性を演出できないスマホ」だと思われかねない。表裏一体の状況なのだ。
「ディスプレイ部分を含めてどこにも直線がない」ともいう。では、それは本当に、このスマホでしかできない体験なのだろうか。また「スマホが直線的である」ことがペイン(苦痛な)ポイントだったのだろうか。
もっと言えば、同じようなサイズではるかにスペックが良い「iPhone 13 mini」より高い値段で売られることに対する説得力を持ちうる体験なのだろうか?
多くの人にとってそれが感じられないから、BALMUDA Phoneを評価する声が少ないのだろう。
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