Zwiftでネオ京を15km走った後で、自宅のある東京都練馬区石神井公園から埼玉県飯能市までの往復60kmちょいをロードバイクで実走してきたのだが、こちらも気持ちよく走れた。
バーチャルライドとリアルライドのどちらも楽しいというのがポイントで、その根幹にあるのは「移動するときに実際に体を動かす」ということだと考えている。インドアバイクのセンサーは、リアルな自転車に取り付けてあるものと事実上同じデータを取得し、それを画面に反映させるもの。
VRChatなどの、メタバースと呼ばれているバーチャルワールドでもできないことはない。映画「Ready Player 1」に登場したような全方向トレッドミルは20万円を超える高価な製品ではあるが販売されている。ただ、通常のトレッドミルと違って地面に相当するところが動いてくれるわけではなく、摩擦の少ない靴を併用することで歩いている感覚を与える、リアルさは多少減ることになるが、大きな進歩だ。足踏みだけではあるが、歩行感覚を与えてくれる数万円のデバイスも登場している。
しかし、こういうデバイスを使わないと、移動するには釣りをしているように自分の行き先ターゲットを投げて、そこにジャンプするという、不思議な移動方法になる。これはHoloportと呼ばれる機能で、2016年に、VR酔いを軽減させる目的で導入された。もちろんオプションでトコトコ一歩ずつ進むモードに変更もできるが、いずれにしても指先だけで下半身へのフィードバックのない動きに筆者はどうしてもまどろっこしさを感じ、冷めてしまうのだ。
ならば、移動の方向だけはコントローラーにまかせて、移動の速さをインドアバイクに委ねるというのはどうだろう。実際、「VZfit」というOculus Questに対応したサービスでは、Googleストリートビューで構成された仮想世界をインドアバイクで走れる。これを、汎用的に使えるようにしてほしい。VZfitでは両腕を振り回してスクワットをするというハードな動きで進むこともできたが、これは疲れすぎるという問題がある。
※ VRChatでの移動方法について追記しました
そんなことを考えていたら、実際にゲームやメタバースの中でさらに活躍できそうなインドアバイクマシンが登場してしまった。
英国のMuovertiという企業が発表した「Tiltbikes」は、自転車一体型のハイエンドスマートトレーナーだが、ハンドル部分にはジョイスティックが設けられており、車体を左右に傾かせれば、そのセンサーデータをゲームに送り込み、画面内の自転車を傾かせることができる。ブレーキも効く。
既存のインドアバイクが漕ぐデータを取得し、せいぜい坂道の負荷をリアルにシミュレートするくらいしかできないのに対して、より多くのことが可能だ。価格はどう考えても数十万円はするのだろうが、現在のスマートトレーナーがその名の通り、ストイックなトレーニングを主体としているのに対して、面白い存在にはなりそうだ。現在はプロトタイプの段階で、2022年中の製品化を予定している。当初は欧米でしか入手できないが、日本でも導入されるようなことがあったら試乗してみたい。
メタバースと人間をつなぐ視覚的なインタフェースはVRゴーグル、ARグラス、湾曲型大型ディスプレイなど多様化しながら進化しているが、人間側の身体的な動きをリアルな負荷とともに伝えてフィードバックさせるマンマシンインタフェースもまた進んでいるのだ。
そんな中、少なからぬバーチャルライダーが特に意識することなくメタバースの最先端を走っている(身体性という意味においては)というのはなかなか面白い現象ではないだろうか。
ということを考えながら先ほどは4回目のネオ京ライドを終えた。ビルの屋上をつないだようなRooftop Rendevousと呼ばれるルート。新橋と汐留を結ぶペデストリアンデッキのようなイメージだ。
ラジオ体操をしているOL、自販機で飲み物を買っている会社員などを眺めながらひた走る。午後には買ったばかりの小径車で近所を回ってみようと思う。メタバースとリアル、ネオ京と東京を行き来している自分が、なんだか小説「スノウ・クラッシュ」のヒロ・プロタゴニストやY.T.みたいに思えてくるから不思議だ。そうだ。お昼は買ったばかりのBianchi Frettaでピザをテイクアウトしに行くことにしよう。食べ終わったらネオ京を走ってカロリーを消費しなければ。今度はどのルートにするかな?
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