ペイペイ♪――今日も街のどこかで軽快な音が響く。今やキャッシュレス決済の代表的なサービスの一つになった「PayPay」は、ユーザー登録者数4300万人以上(2021年11月末時点)を抱え、大々的なポイント還元キャンペーンなどを次々に実施して話題になることも多い。
今、PayPay社が力を入れているのは、自治体とタッグを組んだ還元キャンペーンの実施だ。コロナ禍で飲食店や小売店の集客が伸び悩む中、落ち込んだ客数や経済を上向かせる起爆剤になる可能性がある。
「20%還元」「第2弾スタート」といった威勢のいい宣伝文句に合わせて、各地で大規模な還元キャンペーンを開催している。多額の予算が動くこうしたキャンペーンの裏側をのぞいてみると、PayPayが持つデータを活用してキャンペーンを成功させる取り組みがあった。
コロナ禍を経て、企業の間では再び攻めのIT活用に対する機運が高まりつつある。本特集ではITmedia NEWSのAI専門コーナー「AI+」と連動し、最先端のデータ活用ソリューションや事例、取り組む際のポイントを、企業のリーダー層やデータ活用担当者に詳説する。
PayPayは、スマートフォン画面に表示したバーコードや二次元コードを使って会計を済ませるキャッシュレス決済サービス。PayPayの名前を一躍有名にしたのが、2018年に実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」だ。利用金額の20%を還元するもので、約4カ月間の期間を設定したにもかかわらず10日間で終了するほどの盛況ぶりだった。
その後、19年10月から20年6月は経済産業省主導によるキャッシュレス決済推進のポイント還元事業に上乗りするキャンペーンを実施。こうしたキャンペーンによってキャッシュレス決済自体が普及し、それに合わせてPayPayの登録者数も右肩上がりに増加した。登録者数は4300万人を超え(21年11月末時点)、加盟店は344万店以上(21年9月末時点)だ。
PayPay社が力を入れる自治体とのコラボキャンペーン「あなたのまちを応援プロジェクト」は、全国45都道府県で展開。22年1月以降に実施するものも含めると、448のキャンペーンを実施している。293の自治体が参加し、還元分として自治体が用意した予算は総額で数百億円を超える。
このプロジェクトを20年12月に実施した岡山県岡山市では、PayPay利用者の支出を80億円と見積もっていたが、実際には約147億円に上った。山形県酒田市ではキャンペーン実施によって約44億円の経済効果があったと発表している。
大盛況の「あなたのまちを応援プロジェクト」だが、運営は簡単ではない。自治体の予算を使っているため過不足なく予算内に収めたいが、キャンペーンがどれだけ盛り上がるか事前に予測するのは難しいと、PayPayのキャンペーン運営を担当する宇都宮正騎さん(マーケティング本部マーケティング企画部)は話す。
予測を立てて予算の無駄を減らす取り組みに、利用者のデータやキャンペーンの実績などのデータを活用している。これまで蓄積した、還元率と支出額の関係など過去のキャンペーン実績を活用。加えて、キャンペーンを実施する自治体の周辺地域や都道府県内のPayPayの普及具合を調べることで、実施自治体の近隣からどれだけの人が集まるかを予測する。
業種ごとの店舗データも重要だ。一般的にキャンペーン期間の後半になるとスーパーマーケットやドラッグストアなどでまとめ買いをする人が増えるため、利用金額の総額が底上げされる。しかし飲食店は“まとめ食い”ができないため、駆け込み需要の影響も小さい。PayPay加盟店のうち飲食店の割合が多い自治体では、キャンペーン後半の利用額が大幅に伸びることは少ない。
「最初は試行錯誤が続いていましたが、キャンペーンの実施が増えたことでデータもたまり、キャンペーンの盛り上がり予測の精度が向上しました。予測を基に、キャンペーン期間の打ち出し方や予算に合わせた付与率などを決めていきます」(宇都宮さん)
実際の利用状況と予測を照らし合わせながら、予算が余りそうならキャンペーン情報をアプリにプッシュ通知したり、逆に予算オーバーしそうならプロモーションを控えめにしたりと、キャンペーンの実施状況をコントロールして成功に導いている。
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