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PayPayの大規模還元キャンペーン、成功の裏に緻密なデータ活用あり 個人情報ゼロでも分析できる秘訣は?(2/2 ページ)

» 2021年12月17日 07時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]
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PayPay加盟店のデータ活用も支援

 PayPay社は、加盟店のデータ活用も後押ししている。一般の利用者が使うPayPayのアプリとは別に、決済情報を管理できるツール「PayPay for Business」を加盟店向けに提供。決済回数や決済金額などの情報を時系列で確認することができ、こうしたデータを加盟店が活用できる仕組みだ。

 「加盟店が曜日や時間帯ごとにPayPay決済の波をつかむことで、売り上げが少ないときに底上げをする、売り上げが多いときにさらに売り上げを伸ばす、といった施策を考える材料になります。中小規模の店舗はチェーン店と違いデータ活用が進まないので、PayPayを通して支援していきます」(宇都宮さん)

 PayPay for Businessにはクーポンを発行する機能もあり、各店舗がデータを見ながら独自に施策を打てる。新規顧客を増やすなら「初回限定クーポン」を、売り上げ単価を上げるなら「何円以上で使えるクーポン」を配布するなど売り上げ状況に応じてクーポンを選べる。クーポンの利用データも分かるため、さらなる施策の改善や実施に役立つ。

PayPay登録時に入力するのは電話番号だけ――どうやってデータ活用している?

 PayPay社にとっての顧客は一般の利用者と加盟店だ。この両方に対してデータ活用を進めている同社だが、キャンペーンの分析などに使うために収集している個人情報は意外と少ない。アカウント登録時に必須の情報は電話番号だけで、住所や性別などはPayPay社には分からない。

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 それでも、いつ、どこで、いくら、何回くらいPayPayを使ったかという最小限のデータを基に、データの件数を積み上げることでPayPayの普及促進や数億円が動くキャンペーンのマーケティングに活用できる。

 例えば利用者の年齢や性別などが分からなくても、利用頻度という軸で「利用頻度の高い人」「利用頻度が低い人」「使わなかった人」に分類すれば頻度に合わせて施策を実施できる。施策の効果を調べて改善するサイクルを回せば、最終的には高い効果を得られる。

 「手元にあるデータをさまざまな軸で検討して、PayPayの利用予測やキャンペーンの盛り上がり予測の精度を上げるために専門チームと一緒に予測モデルを作っています」(宇都宮さん)

 PayPayの利用回数が増えれば、今までにない活用方法が生まれたりキャンペーンの盛り上がり予測の精度を高めたりできる。「こういう情報をください」などと利用者の負担を増やしてまでデータを集める必要はなく、決済に必要な情報を使えば十分なのだ。

「データは“なまもの”。常にブラッシュアップが必要」

 世の中でデータ活用の重要性が叫ばれる中、利用回数などシンプルなデータを活用して大規模なキャンペーンの運営や加盟店支援を進めるPayPay社。宇都宮さんは利用者数が膨大な数になる中でデータ活用がどんどん重要になると話す。

 大規模なキャンペーンの最前線でデータを活用したマーケティングを手掛ける宇都宮さんに、データ活用の肝を聞いた。

 「実際にデータ活用に取り組むと、データは蓄積するほど精度が上がっていくと感じます。加えて、データは“なまもの”です。例えばPayPayでは、利用者数やPayPayの普及率は常に変化するので、同じデータや予測モデルを使い続けることはできません。新型コロナなど今までの予測モデルに反映できない事態が起こる可能性もあります。しっかりデータをためて、そのデータを変化に合わせてブラッシュアップすることが大切です」(宇都宮さん)

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