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» 2021年10月28日 07時00分 公開

コロナ禍の宅配量21億個 ヤマト、業務増でもコスト削減 「勘と経験からデータに基づいた経営」(1/2 ページ)

宅配大手のヤマト運輸がデータに基づいた経営に舵を切った。コロナ禍で宅配需要が伸びる中、輸送コストを前年比約10%削減するなど成果を上げている。デジタルデータ戦略担当の執行役員に取り組みを聞く。

[荒岡瑛一郎,ITmedia]

 21億個――この途方もない数は、ヤマト運輸が2020年に配達した荷物の数だ。取扱量はさらに増え、翌21年1〜3月には前年比約20%増に及んだ。さぞかしコストがかさむと思いきや、1個あたりの輸送コストは前年比約10%減少したという。

 加えて、20年4月〜21年3月の集配生産性(ドライバー1人の時間あたりの取扱量)は前年比約15%向上し、どれだけ効率的に利益を上げたかを示すROE(自己資本利益率)は約10%で前年から約6ポイント増加した。コロナ禍で宅配需要が伸び、業務量が増えたのになぜこうした成果を出せたのか。

 背景にはヤマト運輸がグループ全体で進める「データに基づいた経営への転換」がある。これは20年1月に発表した経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」の基本戦略の1つで、中林紀彦執行役員(デジタル機能本部デジタルデータ戦略担当)は「(データを)使えないと生き残っていけない」とデータ活用の必要性を強く訴える。

photo 中林紀彦執行役員(ヤマト運輸デジタル機能本部デジタルデータ戦略担当)

AI+連動特集:今こそ反転攻勢! ウィズコロナ時代のデータ活用

コロナ禍を経て、企業の間では再び攻めのIT活用に対する機運が高まりつつある。本特集ではITmedia NEWSのAI専門コーナー「AI+」と連動し、最先端のデータ活用ソリューションや事例、取り組む際のポイントを、企業のリーダー層やデータ活用担当者に詳説する。

数カ月先の荷物量を1日単位で予測 コストダウンに

 21億個の荷物を運ぶヤマトグループの事業は、多くの経営資源で成り立っている。荷物を運ぶトラックは約5万7000台、社員は約22万5000人、コンビニエンスストアなど取扱店は約18万4000件に及ぶ。個人向け会員制サービス「クロネコメンバーズ」の会員数は約5000万人、法人向け会員制サービス「ヤマトビジネスメンバーズ会員」の会員企業は約130万社を数える。

photo ヤマトグループが保有する経営資源

 こうした大量の経営資源から得たデータを活用するため、クラウドを中心にした独自のデータ基盤「Yamato Digital Platform」(YDP)を20年に構築。経営判断にデータを生かしたり、AIの活用や需要のシミュレーションを行ったりする。将来的には需給バランスに応じて価格が変動するダイナミックプライシングなどリアルタイムに変化するサービスの提供も目指す。

 現在はYDPを活用して数カ月先の荷物量を1日単位で予測し、配送拠点ごとの人員配置やトラックの調達を行う取り組みを実施。急な手配は高コストになりがちなため、なるべく早く調整してコストダウンを行い、利益を確保につなげている。予測モデルは、過去の季節・曜日ごとのデータやEC事業者のセール情報などを基に機械学習で算出する。人が経験で判断するより精度の高い予測を行えるという。

コロナ禍のEC需要増加、新サービスにもデータ活用

 コスト削減以外でもデータ活用を進めている。コロナ禍でEC需要が増加する中、同社は20年6月にEC事業者向け配達サービス「EAZY」の提供を始めた。配達を外部のパートナー企業や個人事業主と連携する仕組みで、どの地域に優先的に導入すればコスト削減の効果が高いか検討する際に蓄積したデータを活用したという。

 クロネコメンバーズの会員やLINE公式アカウントから集めた利用者の声を、AIで分析してニーズを捉えてサービス改善に生かす取り組みも行っている。

 法人向けでは、荷物を運ぶだけでなく顧客のロジスティクス戦略の提案や、医薬品輸送の分野で外気温との差から温度管理を行う仕組みの提供などを、データ活用によって行っているという。

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