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「年1万時間の業務削減」自社AIで成し遂げたオープンハウス カギは住宅チラシの自動作成 キーパーソンに聞く舞台裏(1/2 ページ)

» 2021年09月06日 08時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 自社開発AIを活用し、年1万時間以上の業務を削減──オープンハウスがこんな取り組みに成功した。同社はAIを活用した住宅チラシの自動作成ツールを開発し、2020年7月に運用を開始。すでにチラシ作りに必要な手間を年1万1250時間、その審査に必要な時間を年1085時間削減できたという。

 「これまでは上手にチラシを作れる営業マンもいれば、2〜3時間かけて微妙なチラシを作る人もいた。(ツールを導入して以降は)顧客からは見やすくなったね、といわれることも増えた」──オープンハウスの元営業で、現在は情報システム部に所属する斎藤次郎さんは、自社開発ツールについてこう話す。

photo 山野高将さん(左)、斎藤次郎さん(右)

 ツールを導入するまでは営業マンが30分〜1時間かけて一つ一つチラシを作成しており、クオリティーにばらつきもあったというオープンハウス。1万時間以上もの業務削減に成功し、営業マンたちの負荷を減らしたツールの裏側を、斎藤さんや開発のキーパーソンである山野高将さん(情報システム部部長)に聞いた。

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最大10数パターンのチラシを2〜3分で自動作成

 ツールはオープンハウス社員だけがアクセスできるWebアプリとして提供している。物件名を入力すると、アプリが社内データベースから価格などの情報を検索。このデータを基にチラシを自動作成する仕組みだ。

 AIが活躍するのはチラシのレイアウトや文章など。過去のチラシ数万件を学習させており、物件1件につきレイアウトの異なるチラシを最大で10数種類作成できる他、データを基に価格や戸数といった情報をまとめた文章を自動生成し、レイアウトを崩さず記載できる。必要な時間は物件1件につき2〜3分ほど。データはPDFで出力する。スマートフォンやタブレットからも利用できるという。

 「どの学区の範囲内か」など、強調したい情報を事前に指定できる機能も搭載。「出力したものをそのまま使う人が大半だが、中には出力したPDFを調整して(チラシを完成させて)いる人や、事前に情報を指定している人もいる。その辺りは人によって違う」(山野さん)という。

自動化のきっかけは景表法の審査フロー改善

 このツールはもともと、住宅チラシの記載が景品表示法に抵触しないか審査するチームから「作り方にばらつきがあって審査に時間がかかる」と相談を受けて開発したという。

 こういった経緯もあり、物件の接道状況や建物の面積といった各情報は、文字の大きさなど、景品表示法に沿った形の記載となるよう調整されている。作ったチラシは、広告を審査するチームにオンラインで送信可能。チラシの承認フローをオンライン化し、各営業マンによって異なっていたチラシの作り方を統一することで、広告の審査にかかる時間も削減できたという。

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