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音ゲーの“譜面”作りをAIで高速化 KLabが「スクスタ」で活用、所要時間を半分にCEDEC 2021(1/2 ページ)

» 2021年08月30日 11時27分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 ゲームセンターの筐体としてだけでなく、スマートフォンゲームの一つとしても人気を集めるリズムゲーム。他のゲームと違うのは、ガチャだけでなく新しい曲やその“譜面”も、新規コンテンツとして開発する必要がある点だ。特に譜面、曲に合わせてタッチする位置などを示した時系列データは、1曲1曲に合わせて新規に作ることになる。この手間を、AIを活用して効率化している企業がある。

 「低い難易度の譜面作りにAIを活用することで、1曲当たり40時間ほどかかっていた作業時間を約50%削減できた」──スマホ向けリズムゲーム「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」(スクスタ)を開発するKLabの高田敦史さん(開発推進部機械学習グループ)は、自社開発した「譜面制作支援ツール」についてこう話す。

photo 「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」のスクリーンショット(公式サイトから引用)

 スクスタは当初、年間に追加する予定の楽曲数が24曲だったところ、ペースアップが必要になり60曲に増加。仕事の量が予定の2倍超に膨れ上がったことから、制作を効率化するため2020年に開発を始めたものという。

 ゲーム開発者向けの講演イベント「CEDEC 2021」(8月24〜26日)で、自動化された譜面作りの裏側を高田さんが解説した。

楽曲データを基に自動生成 非エンジニアでも使えるようWebアプリに

 まず、スクスタの譜面がどんな流れで制作されているのか整理する。スクスタでは、1曲につき「初級」から「上級+」まで4つの難易度の譜面を、押すだけで反応する「通常タップ」や長押しが必要な「ロングノーツ」といったノート(流れてくる音符)を組み合わせて制作している。

photo 譜面作りの流れ

 KLabではこれらの譜面を(1)社内の「音楽チーム」が楽曲を基にベースとなる譜面をMIDIファイルとして作成する、(2)「企画チーム」がこれをさらに編集したり、演出を足したりする、(3)本番用のデータに変換し、ゲームに追加する──という流れで完成させている。

photo 譜面制作支援ツールのUI

 譜面制作支援ツールはこのうち、音楽チームの作業を効率化するためのものだ。楽曲のデータをアップロードし、BPMなどを入力すると、各難易度の譜面を自動生成する。エンジニアでない人でも使えるよう、KLabの社員アカウントを持つ人だけがログインできるWebアプリとして開発した。生成にかかる時間はPCのスペックに左右されるが、基本的に数時間かかるという。

photo Unity製ツールのUI

 完成した譜面はMIDIかJSONファイルとして出力可能。処理が完了するとSlackに通知を送る機能や、ツール内から使い方のマニュアルを閲覧できる機能も搭載している。作成した譜面を実際のゲーム画面に似せた画面で確認できるアプリもゲームエンジン「Unity」で開発した。

 「基本的には初級など低い難易度の譜面を作るときに、人間が最終調整することを前提に利用している」と高田さん。ただし、楽曲によっては手を加える必要のない譜面が出力されることもあり、そういった場合はほぼ調整せず企画チームに回す場合もあるという。

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