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インタビュー
» 2021年06月24日 08時00分 公開

月3000枚の墓石写真を自動で名前消し “AIに無関心”だった元石材屋の社員がエンジニアと業務AIを作るまでの一部始終(1/2 ページ)

これまでITとのかかわりが薄かった元石材屋の女性がWeb企業に転職。エンジニアと協力してAIを開発し、墓石情報サイトの業務削減を実現した。「AIに関心なかった」と話す女性が業務改善できた理由とは。

[吉村哲樹,ITmedia]

 元石材屋の女性がIT企業に転職。エンジニアと協力してAIを開発し、墓石情報サイトの業務削減に成功する──Webサービスの開発を手掛けるエイチームライフスタイル(名古屋市)で実際にあった出来事だ。

photo 小野寺智子さん

 キーパーソンは、同社で墓や葬儀に関する情報サイト「ライフドット」の運営に携わる小野寺智子さん(ライフエンディング事業部)。もともとは石材屋でチラシ作りなどの仕事をしており、AIには関心がなかったという。そんな小野寺さんがどういった経緯でAIによる業務削減を実現できたのか。そのきっかけは親会社であるエイチームがグループ全社で行った社内研修にあったという。

サイトに掲載する写真の加工作業に手間と時間が

 小野寺さんは2年前の2019年、「もっとWebに携わる仕事がしたい」と考えエイチームライフスタイルに転職。務めていた石材屋がライフドットと提携していたこともあり、同サービスを運営する部署に配属された。

 小野寺さんが担当する業務はライフドットのマーケティングなど。しかし実際に働いてみると、ある業務の工数がかさんでいることに気付いたという。

 「ライフドットには約8800の霊園の写真を掲載している。その中に映り込んでいる墓石に刻まれた名前は個人情報に当たり、そのままでは掲載できないため、画像を加工して名前の部分を消してから掲載する必要がある。しかし加工作業には時間と手間がかかる上、毎月約3000件もの画像を修正する必要があり、写真の掲載がなかなか追い付かない状態だった」(小野寺さん)

 この状況を問題視した小野寺さんは「AIならこの問題を解決できるのではないか」と考え、社内エンジニアの小林裕幸さん(CTO室)に相談。同社が運営する車の査定・買い取りサービス向けに「車の写真に映った傷をAIで自動認識する」という仕組みを作った経験のある小林さんは、当時のノウハウを活用してこの問題を解決できるのではないかと考えた。そこで小野寺さんと協力し、実際に業務効率化に向けた仕組みを構築することに決めた。

 具体的には、過去に手作業で修正した写真データ数百枚をAIに学習させ、画像の中から文字列部分を自動的に予測する「画像セグメンテーション」のAIモデルを構築。モデルの開発環境には「Google Colaboratory」を利用し、フレームワークには「PyTorch」を採用した。

 こうして作成したモデルは、米GoogleのIaaS「Google Cloud Platform」のクラウド環境上に配置。クラウドストレージに霊園の写真がアップロードされたとき、それを自動的にモデルで分析して文字列部分を予測する仕組みを構築した。

 AIが抽出した文字列部分を画像加工ツールを使って自動的に加工し、画像ファイルをリネーム・リサイズしてサイト掲載可能な状態まで人手を介さずに処理するシステムも開発。これら一連の仕組みを、小林さんらが中心となり2週間ほどで実装したという。小林さんも、学習用のデータの提供などに協力した。

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