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インタビュー
» 2021年06月24日 08時00分 公開

月3000枚の墓石写真を自動で名前消し “AIに無関心”だった元石材屋の社員がエンジニアと業務AIを作るまでの一部始終(2/2 ページ)

[吉村哲樹,ITmedia]
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作業工数を55%削減

 早速この仕組みを現場に投入したところ、それまで手間が掛かっていた画像加工処理の大半が不要となり、導入前と比べて工数を約55%削減できたという。

photo ライフドット

 「ライフドット事業は立ち上がったばかりで、収益性という面ではまだまだこれからという段階だった。そんな中、明確な工数削減効果が得られて収益向上に貢献できたのはとてもうれしかった。画像認識の精度もとても高く、実用上は問題ないので、現時点ではまだAIのチューニングの必要性も感じていない」(小野寺さん)

 まれに墓地の看板など墓石以外の物体に書かれた文字列を誤って消去してしまうケースもあるが、サイト掲載前に目視によるチェック工程を挟んでいるため、運用でカバーできているという。それ以上に工数削減効果の方が大きく、着実に成果が得られているため、すでに次なるAI活用のアイデアを検討中としている。

 「AIを活用した業務改善のアイデアがさまざまなチームのメンバーから出てきている。AIの活用が現場に着実に浸透してきているのを実感している」(同)

きっかけは社内のAI研修

 AIを活用した業務改善に成功した小野寺さん。しかし、小野寺さんはもともとITとは遠い仕事をしており、AIにも関心はなかったという。そんな彼女がなぜ「AIで業務を削減しよう」と考えたのか。そのカギはエイチームがグループ全社で行った社内研修にある。

 エイチームは18年に部門横断でAIの研究開発を進める全社プロジェクト「AI WORKING GROUP」を立ち上げるなど、AIの活用に注力している企業だ。同社では、代表取締役社長の林高生さんが外部のAI研修を受けたことをきっかけに、20年8月から非エンジニア職も含めたグループ全社員を対象にした研修制度「AI基礎教育」を始めた。

 AI基礎教育では、過去に林さんと同様の研修を受けたことがあるAI WORKING GROUPのメンバーや幹部など計20人が教材を作成。営業担当者やマーケターなどグループ全社員の70%を必須受講者と定め、10時間分の必須受講科目と40時間分の任意受講科目からなるカリキュラムをeラーニング形式で提供した。

 小野寺さんもこの研修を受けた一人だ。統計や数学的な内容が多いことから、理解には苦労したものの「今まで縁遠い存在だと思っていたAIがマーケティングなど身近な業務でも大いに活用されている事実を知り、普段の業務でAIを活用できないか自然と意識するようになった」という。

photo 小林裕幸さん

 小林さんに声をかけた理由も、教材を作ったメンバーの一人だったためとしている。小林さんは研修の効果についてこう話す。

 「研修の内容が全社員の間で共有されているという前提で話ができるので、非エンジニア職の方とスムーズにコミュニケーションが取れるようになった。自分が開発したAIモデルについて業務部門の方に説明するような場面でも、以前よりはるかに理解してもらいやすくなった」

「さらに広い用途へAIを適用したい」

 こういった背景から小林さんは、AIの活用を社内でさらに活性化すべく、全社員が参加する定期ミーティングの場で社内のAI活用事例を紹介するなど、啓蒙活動を進めているという。小林さんは今後、ライフドットの事例のように業務部門からの依頼をこなしつつ「さらに広い用途にAI技術を適用していきたい」としている。

 「例えば、Webサイト上でのユーザーの行動履歴データやアンケートの入力情報などを基に『成約しやすいユーザー』を予測するAIモデルの研究などを進めている。まだ実用化の段階には至っていないが、今後はこうした用途も含め、AIのさらなる可能性を広く模索していきたいと考えている」(小林さん)

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