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» 2020年12月29日 10時00分 公開

50代文系副社長、AI学んで1000時間 1人で作ったアプリが大手食品メーカー採用に至るまでの軌跡 (1/3)

「Pythonも知らない状態だった」という50代文系副社長が、大手食品メーカーも採用するほどの商用AIサービスを作るまでの物語。

[井上輝一,ITmedia]

 「もしかしたら、経営よりも研究やエンジニアの方が天職に近いのかもしれない」──そうはにかむのは、商品パッケージのリサーチとデザインを手掛けるプラグ(東京都千代田区)の坂元英樹副社長だ。50代の文系出身。もともとは市場調査会社の社長だったが、デザイン会社と合併して今に至る。

 プラグは現在、パッケージのデザインを評価するAIサービス「パッケージデザインAI」を展開している。すでにカルビーやネスレ日本など、大手食品メーカーがパッケージデザインAIを活用した商品を販売中だ。

 このAIサービスは、東京大学との共同研究ではあるもの、実は坂元さんが1人でプログラミングからAIの実装までこなしたという。

 始める前は「Pythonも知らない状態だった」という坂元さん。そこからどうやってAIサービスの公開までこぎつけたのか。そもそも、副社長という立場にありながら自身での実装の道を選んだ理由は。

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データベースとデザインでどうデジタルシフトするか

 開発を始めた経緯は、プラグが2つの会社の合併からできたことを知ると理解しやすい。市場調査を手掛けていた坂元さんの会社は1957年、パッケージデザインを手掛けていた小川亮さん(現プラグ社長)の会社は89年から歴史がある会社だったが、14年に合併。それぞれの従業員数は約30人で、現在の従業員数は70人だ。

 なぜデザインの会社と市場調査の会社が合併したのか。それは商品のパッケージデザインを決める上で、消費者の反応を調査するプロセスが非常に重要だからだ。

 例えば、デザインの最終候補にA案とB案の2つが残ったとする。このどちらを採用するか決める際に使われる方法の一つとして、数十〜数百人の消費者に集まってもらい、手に取ってみてどちらがより好ましいかをアンケートする手法がある。より票数を得た方が、商品のデザインに選ばれる。

 つまり、商品パッケージの多くは「なんとなくこっちが良いから」という主観よりも「市場的にこちらがより好まれるから」という客観的なデータで決まっている。

 市場調査とデザインの両輪を手に入れた、プラグの2人が共通の経営課題として考えていたのはデジタルシフトだった。両輪の特性を生かしたうまいサービスを作れないか。2人が話し合った結果、市場調査のデータベースでパッケージデザインを評価するAIを作れるのではないかという考えに行き当たった。

Pythonも知らないのに、なぜ副社長が開発に?

プラグの坂元英樹副社長

 開発を始めるに当たっては、外注する方法もあった。しかし坂元さんは外注の問題点として「知見が内部にたまらない」ことを挙げる。

 AIモデルを外注で作っても、望む精度が出るとは限らない。精度が得られないときに内部に知見がないと、何をすれば精度が上がるのかが分からない。実際、開発のごく初期には外注もしてみたが、こうした問題に当たったため、坂元さんらは内製の方針に切り替えた。

 とはいえ、内部にAIができる人材をもともと抱えているわけでもない。であればと、坂元さん自身でイチから勉強することにしたのだという。

目標は1年で1000時間学習 約5カ月で「行けそう」の感覚つかむ

 プログラミング自体が初めてだったという坂元さん。機械学習によく使われるプログラミング言語としてPythonに触ってみたものの、for構文の仕組みすら最初は分からない状態だった。

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