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インタビュー
» 2021年04月15日 17時53分 公開

世界に遅れる日本企業のDX 打開のカギは? AI研究者の東大・松尾教授が語る

日本ディープラーニング協会で理事長を務める松尾豊教授が、日本企業が抱えるDXの問題を説明。どうすればAIやDXでビジネスチャンスをつかめるのか解説する。

[吉川大貴,ITmedia]

 「日本のビジネスでは、DXといってもデータの活用ができていない。日本全体で、いろいろな業界・レイヤーの人がデータやAIの活用を進めていかなくてはならない」──日本ディープラーニング協会で理事長を務める松尾豊教授(東京大学)は、4月9日に開催された「第5回 AI・人工知能 EXPO【春】」の講演で、日本企業が抱えるDXの問題についてこう話す。

日本は地道にデジタル化 海外は一足飛びに新業態

photo 松尾豊教授(東京大学)

 松尾教授によれば、日本企業のDXは進め方に特徴があるという。DXには大きく分けて、アナログなものをデジタル化する「デジタイゼーション」と、デジタル化したものを業務効率化などに役立てる「デジタライゼーション」という工程がある。

 松尾教授によれば、日本企業はまず、もともとあるデータなどをデジタイゼージョンし、そこからデジタライゼーションに取り組むことで、新しい業態を作っていく傾向があるという。

 例えば小売店では、売上の管理を紙からデータに移行することがデジタイゼージョンに当たる。その後、POSレジなどを導入して業務を効率化すれば、デジタライゼーションが実現する。さらにデータの活用を進めれば、在庫管理や顧客に提供するサービスを最適化し、新しい業態が生み出せる。

 一方で海外では、レジなし店舗「Amazon Go」やフードデリバリー「Uber Eats」のように、ディープラーニングなどを活用して一足飛びに新しい業態を作ることが多い。日本は海外のような進め方が苦手なため、こういった形で参入されると市場が破壊されるとしている。

「GPT-3」活用でも英語圏・中国語圏に遅れ?

 松尾教授は、ディープラーニングを使った自然言語処理や画像の自動生成といった分野でも、日本が海外に後れを取る可能性があると話す。例えば米OpenAIが開発した汎用言語モデル「GPT-3」では、英語圏や中国語圏での活用が進み、日本が取り残されることを懸念しているという。

 GPT-3は、文章の次の言葉を予測する訓練を重ねた、1750億個のパラメータで動作する自然言語処理モデルだ。松尾教授によれば、法務や人事の仕事を置き換えられる他、映像・画像処理の分野でも活用が進む可能性があるという。しかし、日本ではその活用に陰りが見えつつあると話す。

 「GPT-3は必要なデータ量や、パラメータの数が膨大。1回の学習に数億円が必要で、資本力が必要になる。日本の技術は資本の戦いになると負け始める傾向にあるが、今はそういった雰囲気が漂いつつある」

経営陣や一般社員のリテラシー向上が今後のカギに

 では、日本の企業がAIを活用したDXを実現し、ビジネスチャンスをつかむにはどうすればいいのか。

 松尾教授は、DXにおけるAIの活用には、社員や経営層に対しITについての意識改革を行うことや、リテラシーを向上させることが必要と話す。特に、システム開発やITに直接関わりのない経営陣や社員が、AIやDXに対する理解度を高めることで、AIを活用して最終的にどんな目標を達成したいかが定められるという。

 「デジタルやAIのリテラシーが高くない人も多い。中にはそういった方とのコミュニケーションに苦労している人も多いのではないか。AIやDXでの課題解決には、携わる人が役割に応じてリテラシーを身につけていくことが必要なので、技術に関する勉強をしていくことが不可欠になる」

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