ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >
SaaSビジネス研究所
ニュース
» 2021年12月22日 07時00分 公開

競合ひしめく営業支援SaaS市場で日本の後発企業が戦えるワケ 現場の声から見いだす勝機

米salesforce.comや米Microsoftなどの競合がひしめく営業支援SaaS市場を生き抜くマツリカ。2015年設立の後発企業にもかかわらずユーザーを獲得できている理由は、営業現場が抱えていた課題にあるという。同社が見いだした勝機とは。

[吉川大貴,ITmedia]

 米salesforce.comの「Salesforce」や「Sales Cloud」など、大手企業の有名ツールがいくつもひしめくSFA(営業支援)SaaS市場。米Microsoftや米Oracleなども参入するこの市場を、2015年設立と比較的新しいにもかかわらず生き抜いている日本企業がある。AIを活用した営業支援ツール「Senses」(センシーズ)を提供するマツリカだ。

 Sensesの利用企業数は21年12月時点で約2000社。20年7月には3度目の資金調達に成功するなど、B2B SaaSとして勢いを増している。一方で、事業を始めるときには周囲から「本当にその市場に参入するの?」という声もあったと、マツリカの黒佐英司CEOは振り返る。

photo マツリカの黒佐英司CEO

 周囲から疑問の声もある中、マツリカは自社の製品にどんな勝機を見込んで営業支援SaaS市場に挑んだのか。IT製品口コミサービス「ITreview」を運営するアイティクラウド(東京都港区)が開いたオンラインイベント「SaaS MARKETING FES 2021」(12月15〜16日)で黒佐CEOが明かした。

「導入したが使いこなせず」に着目 使いやすさ重視で現場の支持獲得

 Sensesは、名刺管理や顧客情報の一元管理、メールマガジンの作成・配信機能などを備えるクラウドサービス。12月時点での導入企業はリコーやソフトバンクロボティクス、Z会など約2000社に上る。開発に当たっては設計思想に「現場ファースト」を掲げ、営業担当者が使いやすい製品を目指したという。

Sensesの紹介映像

 マツリカが営業支援SaaS市場で戦える理由はこの設計思想に隠れている。営業担当者の使いやすさを重視したのは、既存の営業支援ツールにある課題があったからだ。

 「営業支援ツールは非常に伸びている領域だが、われわれの参入前には『導入したけど使いこなせない』という事態が頻発しており、形骸化したツールがたくさんあった。調査の結果、規模や業界を問わず、さまざまな企業が同じ課題感を抱えていたことが分かったため、この問題を解決すべきと考えて参入した」

photo マツリカの調査結果のイメージ

 マツリカは調査結果を参考に、既存の営業支援ツールの使いにくい点を分析。データ入力、集めたデータの活用、設定のカスタマイズの3つが難しく、せっかく導入したツールが使われない理由になっているという仮説を出した。

 Sensesの開発にはこれらの仮説が生かされている。データ入力のしやすさを重視してUI/UXを設計した他、AIを活用した売り上げ予測機能を搭載し、集めた情報を整理する手間を減らした。設定をカスタマイズしやすくするため、ノーコード開発機能も採用。非エンジニアが多い営業部門でも設定を変更できるようにした。

 営業の使いやすさを重視した結果、当初は決裁権者に魅力が伝わりにくく、導入につながらない時期もあったものの、次第に受け入れられるようになったという。

 「営業支援ツールは基本的に、業務の管理者に価値が届く製品。しかもB2Bなので、意思決定をするのも管理者や経営者。その中で現場ファーストを掲げたので、当初は強みが伝わらないこともあり苦労したが、初心を忘れなかった結果として今があると思っている」

「今後はDXミドルユーザーが増える」 マツリカが狙う立ち位置

 現場の支持をユーザー獲得につなげるマツリカ。今後の利用拡大に向けては、市場での立ち位置にも注意している。同社は現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)への意識が高くも低くもない「DXミドルユーザー」の中堅・中小企業をSensesのメインターゲットに定めているという。理由は2つある。

photo マツリカが狙う立ち位置のイメージ

 1つは競合とは違った層のユーザーを獲得するためだ。DXへの意識が高い大企業はSalesforceやMicrosoftのDynamics 365といったサービスを、意識が低い中小企業などはExcelやノーコード開発サービス「kintone」などを活用することが多い。一方、中堅・中小のDXミドルユーザー向けサービスは“空白地帯”になっているとみる。

 もう1つの理由は、将来最も厚くなる層はDXミドルユーザーだと予想しているからだ。

 「今後、日本での営業支援ツールの利用率が海外並みに高くなれば、DXへの関心が低い層の意識は変わっていくはず。一方、IT人材は市場全体で不足しているから、いま意識が中くらいの企業や高い企業の全てが『DXヘビーユーザー』になるとは限らない。いずれは頭打ちになるので、結局は中間層の企業が増えると見込んでいる」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.