11月月初。それは年末調整の書類をオンラインで集められる「Mominoki」や、タイムカード機能を備えた「Tokiwagi」といった人事向けSaaSを提供するラクラス(東京都千代田区)にとって憂鬱な時期だった。年末調整やタイムカードに関する手続きの締め日が重なるこの時期はサーバへの負荷が集中し、遅延が起きる恐れがあったためだ。
「(2021年の)11月1日は月初かつ休み明けの月曜日。タイムカードの締めがあって、年末調整も控えている。例年であれば非常に心配だった」──これまで抱えていた不安について、ラクラスの北原佳郎会長はこう話す。
しかし、同社はこれまでオンプレミスで運用していた各サービスのデータベースを、20年11月までにクラウドデータベース「Oracle Exadata Cloud Service」(ExaCS)に移行。併せてそれぞれの提供基盤も、他社クラウドから日本オラクルのIaaS「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)に移行することで、この問題を解消したという。
「2021年は何も心配もなく11月1日を迎えることができた」と話す北原会長。人事向けサービスならではの心配事を打破したラクラスのフルクラウド化はどのように成し遂げられたのか。日本オラクルが開催しているオンラインイベント「Oracle Cloud Days 2021」(11月9日〜12日)で、北原会長が解説した。
ラクラスはこれまで、TokiwagiやMominokiを含む5種類のクラウドサービスのデータベースに、オンプレ向けの「Oracle Database」を活用していた。しかしピーク時にはサーバの処理能力が追い付かず、遅延が発生する可能性があった。
例えばMominokiの場合、21年11月1日はおよそ12万人がログインし、一斉に年末調整の手続きを行った。例年通りであれば、以降3週間に渡って40万枚以上の書類が送られてくる見込みという。
具体的な件数は明かしていないものの、Tokiwagiも朝や夕方、月初に負荷が集中する傾向にあった。一般的な始業時間に当たる午前8時半から10時半、終業時間に当たる午後5時から7時、そしてタイムカードに関する手続きの締め日となる月初の3営業日に負荷が増大していたという。
こういった事情もあり、ピーク時には遅延によるユーザーの満足度低下を抑えるため、自社の社員にデータベースへの負荷が大きい業務を行わないよう指示していた。一方、平時の負荷はさほど大きくないため、常にピーク時と同じリソースを用意することは難しかった。そこで、OCI上で運用でき、リソースを柔軟に追加できるExaCSへの移行を決めた。
ラクラスがExaCSの採用を考えた理由はもう一つある。これまでデータセンターで使っていたサーバ機器の保守期限切れだ。
ハードウェアの保守期限切れを受け、機器の入れ替えやバージョンアップも検討したものの、リソース追加の柔軟性に加え、運用コストの削減効果などを期待し、データベースのクラウド化を決めた。併せて提供基盤もOCIに移行すると決めたのは、事業拡大やそれに伴う処理の増加を見据え、システムの拡張性を高めるためだったと北原会長は話す。
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