「ディープラーニング系の将棋ソフトを使いたいのですが……」──11月中旬、筆者のもとにある相談が舞い込んできた。
発言の主は、将棋のプロ棋士である広瀬章人八段。王位、竜王のタイトル獲得経験もある、トッププロの一人だ(順位戦では最上位のクラスに当たるA級に在籍)。将棋に詳しくなくても、ネットミームに親しい人なら「羽生善治さんに魂を抜かれた棋士」という画像なら見たことがあるかもしれない(本人いわく「上を向いて考えていただけ」とのこと)。
将棋界では「Ponanza」が2013年に佐藤慎一四段(当時)に勝ってから、囲碁界では「AlphaGo」が2016年にイ・セドル九段(当時)に勝って以来、プロ棋士によるコンピュータを使った研究が本格化している。将棋ファンには、今をときめく藤井聡太竜王が米AMDのハイエンドCPU「Ryzen Threadripper 3990X」で自作PCを組んで分析をしているという話は有名だろう。
筆者はITmedia PC USER、Mobileなどを渡り歩いて今はNEWSに身を置いているため、ハードウェアのスペックについても、AIが必要とする要件についても世の中の平均よりは少しだけ知っている立場だ。個人的な付き合いもあったことから、広瀬八段の相談先にばってき(?)された。
なるほど、ディープラーニングで将棋の研究がしたいと。聞くと第9世代Core i9 9900Kを搭載したマシンは手元にあるが、グラフィックスカード(GPUを搭載したカード)は載せていないという。では、追加で米NVIDIAのハイエンドGPU「GeForce RTX 3090」を1基か2基挿せば十分そうだ──というのが最初の所感だった。
もっとも、タイトルを獲得すれば数百万〜数千万円ほども賞金が出る世界なのだからPCのスペックなど盛れるだけ盛っておけという考え方もある。かといって、使いもしない大容量SSD・HDDなど、無駄なものは提案したくない。最小のコストで必要な効果を出すなら追加GPUのみでいいのでは、という考えだった。
しかし、気にかかることがあった。藤井竜王がハイエンドCPUであるThreadripperを採用している点だ。
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