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目指すは「リアル版AWS」──トヨタの未来都市は何がすごいのか(1/2 ページ)

» 2021年12月29日 12時00分 公開
[山川晶之ITmedia]

 「リアル版AWSを目指している」――これは、トヨタ自動車が静岡県に建設中の実証実験都市「Woven City」のメディア向けプレゼンで飛び出したワードだ。一体どういうことか。

Woven Planet本社受付に置かれた企業のロゴ

 Woven Cityは、トヨタがCES 2020で発表した実証実験都市。東北に生産拠点を移した同社の東富士工場跡地を使い、東京ドーム15個分の約70万平方メートル(フェーズ1は約5万平方メートル)内に街を作る計画だ。建設・運営はトヨタ子会社のWoven Planetが手掛ける。「ヒト中心の街」「実証実験の街」「未完成の街」の3つをコンセプトに、街全体をネットとつなげ、パーソナルモビリティ、自動運転、決済、スマートホーム、ロボティクスなどの実験を進める。

フェーズ1の開所予定は早くて2024年

 実際に人が住む街に、あらゆるモノ、サービスがネットとつながった環境を先取りすることで、コネクテッド時代の技術/サービス開発から実証までのサイクルを早める。スマートシティーそのものの研究に加え、その時代に向けた新たなビジネスモデルを生み出すミッションも課されている。

Woven Cityのコンセプト

 しかし、約70万平方メートルの街をコネクテッド化するといっても、並大抵のことではない。街には、自動運転車や自動運転バス、立ち乗りEVのようなモビリティが駆け巡り、物流やごみ処理などインフラ部分もコントロールすることを意味する。住空間は、備え付けられたセンサー情報を基に快適な生活をサポートすることが求められており、これらを統合/管理し、ユーザーとサービス開発者の両者が使いやすい環境を整備しなければならない。

 その要となるのが、街をコネクテッド化するための基盤「City OS」だ。

街の根幹を支える「City OS」

 OSといっても、字の通りオペレーティングシステムではなく、スマートシティーに必要なソフトウェアプラットフォームのことを指す。これは、経産省が提唱する「都市OS」構想に基づいたもので、生活を便利にするアプリケーションの基盤となり、街で働く膨大なデバイスを一元管理するハブにもなる。

 City OSは、プラットフォーム上で動くアプリケーションが街の機能にアクセスしやすいよう、各機能をAPIで呼び出せるようになっている。物流の例でいえば、荷物が届いた際に、「物流用の車両を手配してください」というオーダーを出したり、「荷物が届いた」という通知を住人に出すことも簡単に実装できるという。また、それぞれの機能をマイクロサービスとしても用意し、複数を組み合わせて新しいサービスを作りやすくしている。

City OSは、アプリケーションとハードウェアのハブとなる

 Woven PlanetでR&Dディレクターを務める大石耕太氏は、こうした特徴を基にCity OSを「リアル版AWS(Amazon Web Services)」と例える。

 住民のデータはOS内に格納される。外部のサービス提供者がCity OSにアクセスすることを想定しており、アプリケーションはOSを経由してユーザーデータにアクセスする。City OS内に閉じた環境でアプリケーションを実行するため、万が一下手なアプリケーションが実行されたとしても、外壁で守られるという構造のようだ。アプリケーションのばらつきによるトラブルをOS側で吸収する。

 セキュリティを強固にすることでサービス開発の参加者を増やす狙いもある。「いいアイデアを持っている人でも、セキュリティ要件で参加できないのは残念。われわれでできるだけ環境を整備したい」(大石氏)

 Woven Cityは、外部サービス提供者のフィードバックにも活用できる。現状、コネクテッド技術が実装されていない街でリアルサービスのフィードバックを得ようとしても、アンケート回答止まりで有効なデータが得られない。Woven Cityであれば、体系的かつ詳細なフィードバックが得られるため、事業者側からは、より具体的にサービスの改善につなげられるとの声を聞くようだ。

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