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好きな重力を体験できる、ふくらはぎ装着型デバイス 他惑星の重力環境をシミュレートInnovative Tech

» 2022年01月07日 09時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 香港城市大学の研究チームが開発した「Weighted Walking: Propeller-based On-leg Force Simulation of Walking in Fluid Materials in VR」は、歩行中のユーザーの下肢に浮力と抵抗力のフィードバックを与えられるダクト式ファンを整備した、ふくらはぎ装着型ウェアラブルデバイスだ。川や泥などの流体の中に足を入れて歩く際の粘度や、他の惑星の異なる重力環境をシミュレートできる。

ふくらはぎにデバイスを装着したユーザーが、VR内の異なる流体や重量環境の中を歩いている様子

 システムは、ダクト式ファンや3Dプリントした躯体、接続部品などを備えたカーフスリーブ装置で構成する。ベースとなる躯体の側面に上向きの気流を生成するダクト式ファン、背面に下向きの気流を生成するダクト式ファンの2種類を設置。

それぞれの脚には、上向きの気流/下向きの気流を発生させるダクト式ファンを搭載する

 ダクト式ファンには、12枚のプロペラと2300KVのブラシレスモーターを搭載したハイパワーダクトファンを使用。各ダクト式ファンは、65Aの駆動電流で最大22.4N(2.24kg)の力を発生できる。振動を抑えて快適な装着感を得るために、躯体の内部にスポンジを配置している。

システムの構造図と外観

 制御システムでは、ファンで発生する力と駆動電流が対応する計算モデルを実装。ESC(Electronic Speed-Controller)ボードの駆動電流を5A間隔で0〜65Aに制御して力のレベル/強さを測定し、その電流に基づいて発生する力を予測する線形回帰モデルを構築した。歩行時に浮力と抵抗力によって算出できる関節力を主に考え、それぞれの脚に搭載した2つのダクト式ファンを制御する。

 ユーザーがその場で歩いているときの足の位置と速度を記録することで、システムは気流の強さと方向をリアルタイムに調整し、さまざまな種類とレベルの力をシミュレートできる。

 例えば、ダクト式ファンが強力な推力を発生させることで、ユーザーの下肢がさまざまな流体や物質(水や泥など)の中を移動する際に生じる力(浮力や流体抵抗)をシミュレート。また、別の惑星での歩行など、重力の異なる環境での歩行をシミュレートする。

Source and Image Credits: Pingchuan Ke, Shaoyu Cai, Lantian Xu, and Kening Zhu. 2021. Weighted Walking: Propeller-based On-leg Force Simulation of Walking in Fluid Materials in VR. In SIGGRAPH Asia 2021 Emerging Technologies (SA ’21 Emerging Technologies). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 19, 1-2. DOI:https://doi.org/10.1145/3476122.3484842



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