AFの話から行きたい。あっさり「賢くて速いAF」と書いちゃったけど、要点は3つある。
1つは「被写体の自動検出」。被写体を自動的に見つけてそこをトラッキングしてくれると撮影時の負担がぐっと減る。
ソニーはいち早く動物瞳AFを搭載し、α1以降で鳥の瞳AFにも対応した。ただ、人物・動物・鳥をあらかじめ指定しなきゃいけないのは惜しい。
キヤノンはEOS R5/6で搭載した人物・動物・鳥を自動検出するモードにモータースポーツ向けの乗りもの優先も搭載した。ただモータースポーツをターゲットにしたせいか、汎用性はあまり感じなかった。
この2社を凌駕したのがニコン。人物、犬や猫に加え、鳥、車、バイク、自転車、列車、飛行機の9種類を自動検出してくれる。まあ、犬と猫を別に勘定しているというのもあるけど、動体撮影の代表的な被写体である、人・動物・鳥・乗りもの(飛行機も含む)を広く網羅してきたのだ。
1つは「トラッキング」の精度。自動検出した被写体、あるいは撮影者が指定した被写体をリアルタイムでトラッキングしてくれるAFはどこも力を入れている。これの精度と速度が上がれば、構図とタイミングに集中できる。
1つは「暗所」でのAF。厳しい条件下でも速くて賢いAFが維持できるかも求められていて、これはキヤノンが優秀だと思う。
つまり、被写体を自動的に検出して、そうじゃないときも指定した被写体を捕まえて、間違いなくトラッキングし続けてしかも超高速なAFが目指す姿ということだ。
続いて、電子シャッター。
電子シャッターのメリットは像面位相差センサーを使ってAF測距点を大量に置けること、メカシャッターによる細かな振動や音がないこと、メカシャッターがない分ブラックアウトフリーが可能なこと、高速シャッターや高速連写が可能なこと、耐久性があるなどいっぱいあるが、逆にフリッカーや高速な動体を撮影するときのローリングシャッター歪みなどの欠点もある。
ローリングシャッター歪みに関しては、ソニーがいち早く高速読み出しによる歪み軽減を実現した「アンチディストーションシャッター」のセンサーをα9シリーズに搭載し、α1ももちろんそれを積んでる。
だから、メカシャッターを最初にとっぱらって電子シャッターのみにするのはソニーが最初かなと思っていたが(すでにニコンのNikon 1や、シグマのfpという例はあるけれども)、まさかニコンがフラッグシップ機でそれをやってくるとは思わなかった。
Z 9の電子シャッターがどのくらい歪まないのかは今あれこれ試しているけれども、かなりいけそうだ。
そして電子シャッターなのでメカシャッターでは不可能だった速度まで連写速度を上げられるし、連写中のブラックアウトもなくせる。
これはすごい。
どれも2021年にはじまったトレンドではないけれども、その性能を追求したフラッグシップ機が登場したというのが大きいのだ。
特にAF回りと電子シャッターの進化はめざましい。
賢くて速いAFや歪まない電子シャッターのセンサーはなんとかコストを抑えてミドルレンジのカメラにも降りてきてほしいなあと思うのである。
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