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勃起を監視するコンドーム型デバイス ペニスの長さと円周を測定、遠隔医療に活用Innovative Tech(1/2 ページ)

» 2022年01月11日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 韓国の漢陽大学校とKorea Electronics Technology Institute、Daegu-Gyeongbuk Medical Innovation Foundation(DGMIF)による研究チームが発表した「Wearable E-Textile and CNT Sensor Wireless Measurement System for Real-Time Penile Erection Monitoring」は、勃起前後のペニスの長さや太さ、曲がり具合を測定するコンドーム型ウェアラブルデバイスだ。

 携帯性と利便性、快適性を備えているため、医師の手を借りずに家庭で使用できる。ワイヤレスデバイスであり、データの保存とリアルタイムでのアクセスが可能なため、遠隔ヘルスケアサービスを実現できるという。

 勃起の定期的なモニタリングは、高血圧や糖尿病、冠動脈疾患などの生活習慣病や男性更年期障害のパラメーターになり、勃起不全の診断や勃起機能の治療にも役立つ。そのため、患者が記入する主観的なアンケートではなく、信頼性の高いペニス測定データを得ることは、臨床医が診断を下す上で重要な情報となる。

 さらに、従来分度器で測定していたペイロニー病の治療前後の角度を定量的に測定できたり、前立腺摘除術後に起こる勃起の定期観察に使用できたり、バイアグラなどの薬物投与により勃起不全を回復させる陰茎リハビリテーションに役立てたりなど、活用範囲は多岐にわたる。

 これまでの勃起検査の測定方法には、国際勃起機能指数(IIEF-5)や超音波検査、スタンプテスト、リジスキャンなどがある。IIEF-5は代表的な質問票であるが、想起バイアスなどの誤差が生じる可能性が高く、スタンプテストは1回分の勃起しか判定できない。

 リジスキャンは、睡眠中の拡張度と硬さを同時に測定できるため、標準的な検査方法として広く使われている装置だが、この装置は重くかさばるため、携帯性に限界がある。また、毎日の測定に使用する部品が高価であり、家庭で使用することは困難である。それぞれデメリットがあり、最適化の余地が残っている。

 この研究では、男性の勃起前後のペニスの長さと円周、曲率を測定するペニス計測デバイスと、計測したデータをスマートフォンやPCなどからリアルタイムにモニタリングできるモバイルヘルスケアシステムを提案。

 ペニス計測デバイスは、布地に電気的要素を付加したE-textileセンサーと、ひずみを測定するCNT(カーボンナノチューブ)搭載センサーを作成した。コンドーム型でペニスに被せるように装着できる。

 E-textileセンサーでは、導電性インクにカーボン系溶剤と分散安定剤を混合し、湿式で圧力測定ができる繊維センサーを作り、非導電性繊維(スパンデックス混)に注入し、導電性繊維センサーを作成した。センサーを布地に縫合し、根元には導電性のスナップボタンを取り付けた。E-textileセンサーは柔軟性が高く、下着や衣服に着脱可能だ。

E-textileセンサー概要図
(a)E-textileセンサーのひずみテスト、(b)E-textileセンサーの外観。生地にセンサー(青い点線)と、導電性のスナップボダン(赤い点線)が備わる
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