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「広告表示と比較して、PCに与える影響は許容範囲内」──Coinhive事件、最高裁の判決全文(1/2 ページ)

» 2022年01月20日 20時39分 公開
[松浦立樹ITmedia]

 仮想通貨のマイニングツール「Coinhive」を閲覧者に無断で自身のWebサイトに設置したとして、Webデザイナーの男性が不正指令電磁的記録保管罪に問われた「Coinhive事件」を無罪と判断した理由について、最高裁判所が1月20日に全文を公開した。

最高裁の判決の一部

 不正指令電磁的記録に関する罪は、利用者の意図する動作をさせないなどの「反意図性」と、社会的に許容できない影響を与えるなど「不正性」の2つを持つプログラムの作成や提供、保管を処罰するものであると最高裁は説明。

 被告側が閲覧者の同意なくマイニングのプログラムコードを設置したことに関して最高裁は「より適切な利用方法などが採り得た」とし、閲覧者の知らないところで行われていたマイニングには反意図性があったことを認めた。

 一方で、そのコードがPCの機能や情報処理に与える影響は「CPUを一定程度使用することにとどまり、使用程度も閲覧者がその変化に気付くほどのものではない」と指摘。

 「Webサイトの閲覧により、運営者が利益を得る仕組みは情報の流通にとって重要である」とした上で「広告表示プログラムと比較して、PCに与える影響に有意な差は認められず、社会的に許容し得る範囲内といえる」とCoinhiveの利用に不正性はないと判断した。

 これらの理由から「プログラムコードには反意図性は認められるが、不正性は認められないため、不正指令電磁的記録とは認められない」と結論した。

 有罪判決を出した二審での解釈については「不正指令電磁的記録の解釈を誤り、その該当性を判断する際に考慮すべき事情を適切に考慮しなかったため、重大な事実誤認をしたものというべき」と指摘。「これらが判決に影響を及ぼすことは明らかであって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる」とした。

 最高裁の判決を受けて、Twitter上では「本当によかった」や「よく戦ったと思う」「(有罪ならば)広告しまくってるやつはどうなんだよって話になる」など無罪を喜ぶ声が見られた他、「CPUやメモリ食いつぶすレベルだと(判決が)変わる可能性はあるのでは」など判例が生まれたことに対する意見も見られた。

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