日進月歩で変化するIT業界。技術もそれを活用するビジネスも、状況は日々めまぐるしく移り変わる。そこで本連載では、休みの日でもITについて楽しく考えられるよう、テクノロジーのエッセンスを含んだエンターテインメント作品の紹介などを不定期に発信する。
「ゲームばかりしていると命の大切さが分からなくなる」「現実にもリセットボタンがあると勘違いする」──ゲーム好きなら、一度はこのような言説を聞いたことがあるはずだ。
スマホゲームが普及して以降はあまり聞かなくなったが、今でもゲーム障害を巡る議論の中で、似たような主張を耳にすることがあるかもしれない。この意見に「ゲーム×医療」というテーマで切り込んだ番組が、2016年から17年にかけて放送された「仮面ライダーエグゼイド」だ。まずは主人公・仮面ライダーエグゼイドのビジュアルを見てほしい。
サイズ感やビビッドなカラーリング、「仮面ライダー」といわれて思い浮かべる見た目とは程遠いマスクに面食らうかもしれない。
作中の用語を使って説明すると、左の画像は「レベル1」、右は「レベル2」。最初は左の見た目だが、ゲームのようにレベルアップすると右の見た目になり、強くなるという設定だ。仮面ライダーエグゼイドでは、こういった雰囲気の仮面ライダーが何人も登場し、群像劇を繰り広げる。
ストーリーはこうだ。現実世界に進出したコンピュータウイルス「バグスターウイルス」は、人間に感染すると「ゲーム病」という病を引き起こす。治すには、バグスターウイルスが形を取った怪人を倒さなければいけない。主人公の研修医・宝生永夢(ほうじょうえむ)をはじめとしたドクターたちは、ゲーム企業「幻夢(げんむ)コーポレーション」が開発したベルトで変身する仮面ライダーとなり、ウイルスとの戦いに挑む。
主な登場人物は、過去にゲーム病で恋人を亡くした天才外科医や、医療免許を剥奪された無免許医、うそが得意な監察医、天才ゲームクリエイターの幻夢コーポレーション社長など。彼らが自身のプライドや患者の命を賭け、ときには対立したり、協力したりする。
そんな同作の特徴といえるのが、ゲームというモチーフの扱いだ。おもちゃの販促番組でもある「仮面ライダー」の中でも、2000年以降に放送された「平成ライダー」は、強い敵が出れば新しい変身アイテム(おもちゃ)が出て仮面ライダーが強くなり、しばらくその強さをアピールするともっと強い敵が現れ──という流れを基本としている(もちろん例外もあるが)。
この流れをいかに自然に、説得力を持った展開として描くかが仮面ライダーの見どころの一つだ。仮面ライダーエグゼイドでは、より強い敵が現れたとき、それを「どう攻略するか」という視点で描き、ゲームになぞらえることでこの課題を乗り越えている。
例えば、時間を止める力「ポーズ」を使って仮面ライダー全員を圧倒する敵が現れたとき。エグゼイドは過去の敵と協力し、新アイテムを手に入れる。新アイテムはまるで「スーパーマリオブラザーズ」のアイテム「スター」のように“無敵”になれる力があり、相手が時間を止めてもお構いなしに戦えるので、苦しめられた敵に勝利できる──といった感じだ。
この傾向が最も色濃いのが、作中における命の描き方だ。ゲーム病は死に至る病で、治療されなければ肉体ごと消滅してしまう。しかし実は、命にはセーブデータがあって、条件がそろえばウイルスが具現化したゲームキャラクターのような存在として何度でも復活できる。
ところがゲームの管理権限を悪用すれば、セーブデータを完全に消去できて──というように、この作品はゲームのロジックを使って、命の価値をめまぐるしく変えていく。そんな中で、ドクターたちは患者の命とどう向き合うのか──が、仮面ライダーエグゼイドの魅力といえるだろう。
仮面ライダーエグゼイドは、4月23日から東映の公式YouTubeチャンネルで無料配信が始まる。全45話で、毎週土曜日に2話ずつ公開する仕組みだ。ここまで聞いて興味が出た人なら、毎週の楽しみにできるかもしれない。
ちなみに、おもちゃを作っていたのがバンダイだったからか、作中では人気ゲーム機として「ワンダースワン」が登場する。仮面ライダーエグゼイドの世界は、ワンダースワンが覇権を取った世界なのかもしれない。
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