ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >
ニュース
» 2022年05月13日 21時00分 公開

「法に触れるから月額0円をやめた」わけではない 楽天モバイルが電通法を持ち出した理由とは

楽天モバイルの月額0円プラン廃止。7月1日から全ユーザー1078円スタートに引き上げられるが、その経緯を説明する際に電気通信事業法に抵触するおそれがあったとのコメントが出た。一体どこに抵触する可能性があったのか、同社広報部に確認した。

[山川晶之ITmedia]

 大きな話題となった楽天モバイルの月額0円プラン廃止。7月1日から最低月額利用料が全ユーザー1078円からに引き上げられるが、その経緯を説明する際に電気通信事業法に抵触するおそれがあったとのコメントが会見で出た。そのことから月額0円をやめた理由とする報道も一部で出ている。

新プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」

 結論から言うと、電気通信事業法に抵触する可能性があったのは、0円スタートの既存プランと、1078円スタートの新プランが“併存”することに対するもの。同社代表取締役会長の三木谷浩史氏も「既存ユーザーは当面(UN-LIMIT VIを)使って頂く予定だったが、法律的にだめだった」としており、併存に対して問題があったとする。つまり月額0円スタートのプラン自体が法に触れたわけではない。

 楽天モバイルのプランは、バージョンが異なるものの「ワンプラン」のみの提供にこだわっており、基本的に1プランしか存在しない。しかし、同じプランでありながら、月額0円スタートのユーザーと、月額1078円スタートのユーザーが共存すると、月額0円のユーザーは「契約し続けたほうがお得」と判断して、他社に流れていかない。つまり、総務省が目指す、自由な契約を妨げる「ユーザーの囲い込み」に該当する可能性があった。

 では、この「囲い込み」はどの基準で判断されるのだろうか。楽天モバイルは、既存プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」と新プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」の並行提供ができない理由として、以下のように説明している。

新プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」提供開始以降に、旧プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」の新規申込を停止した上で並行提供することについては、「電気通信事業法 第二十七条の三 第二項第二号」に抵触しうると当社としては考えております。

月間データ通信量が1GB以下の場合における両プランの差額を割引と捉えると、その額は「一年当たりの利益の額が当該契約に係る一月当たりの料金を超える」に該当する可能性があると考えております。なお、当社は日頃より総務省とは密に連携をとっており、新しい料金プランについては、ご報告済みです。今後も法令順守に努めてまいります。

 電気通信事業法第27条の3に抵触しうるとのことだが、「『一年当たりの利益の額が当該契約に係る一月当たりの料金を超える』に該当する可能性」という部分が少し分かりにくいので楽天モバイル広報部に確認した。少しかみ砕くとこうなる。

 例えば、月額2000円のプランを提供していたとしよう。途中から同じプランを月額2100円に改定しようとした場合、差額は100円。年額に換算すると1200円になる。この差額は、改定後の月額料金2100円を超えることはないが、月額2200円に改定する場合、年間の差額は2400円に増える。すると、改定後の月額料金より300円多く差額が発生してしまう。これが、「一年当たりの利益の額が当該契約に係る一月当たりの料金を超える」に相当し、囲い込みに該当してしまう。年間の差額が月額料金を超えてはいけいようだ。

 楽天モバイルの場合は、0円から980円のため差額は980円。年間に換算すると1万1760円の差額になる。月額980円からなので、桁違いの差額が発生することになる。これが、「囲い込み」に抵触する可能性があった。

 結果、既存ユーザーと新規ユーザーの併存はできず、既存ユーザーを含めた新プランへの強制移行を決定する事態となった。複数のプランを提供する他社では起きづらい問題であり、楽天が分かりやすさからワンプランにこだわった弊害でもある。ただし、強制移行がユーザーフレンドリーかといえば話は別だ。

月額0円プランを廃止する理由は別にある

 月額0円プランを廃止する理由だが、同社広報部によると「データをたくさん使う時代でお客様が満足するプランを考えた。他のキャリアと比べてもグループのシナジーが強いので、そこをもっと強く押し出したい」とする。一方で、「今回の新プランで利益増加で黒字化も見込める。弊社としてそこを狙いたいのは事実」とも明かす。

 楽天の決算資料によると、2021年のモバイル事業は約4212億円の赤字。2022年第1四半期だけでも1350億円の赤字を出しており、早急な黒字化が必要だと考えられる。同社は、日本郵政からの出資受け入れや楽天銀行のIPO計画などモバイル事業への投資のため、いくつもの資金調達を行っているが、それにも限界がある。

楽天モバイルは年間4000億円以上の赤字に

 三木谷氏も、5月13日の決算会見で「0円でずっと使われても困っちゃうと言うのがぶっちゃけの話かな。正直に言って」と胸の内を吐露している。

 一方で、新プランについては「1プランで980円スタートというのは妥当じゃないかなと思っている。それでもかなりアグレッシブなプライシングだと思う」(三木谷氏)としており、4Gの通信エリアも人口カバー率97%に到達するなど価格だけでなく品質面も含めて、プライシングに自信を寄せる。この決定が吉と出るのか、7月以降のユーザー動向に注目が集まりそうだ。

【訂正:2022年5月16日午前11時00分 電気通信事業法の該当条文の表記を修正しました】

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.