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Kindleが「カップラーメンの重し」に 中国のKindle終了が日本にとっても他人事ではない理由(2/3 ページ)

» 2022年06月23日 14時54分 公開
[山谷剛史ITmedia]

日本も他人事とは思えない理由

 大手ECサイトの京東の劉強東CEOは、当時 「海賊版問題により、Kindleが中国で成功することは決してない」と、Kindleの失敗を予測していた。「Kindleを購入したときに人々が最初にしたことはKindleをクラックすることだった」と語り、今に至るまで多くのユーザーが、インターネットから電子書籍のリソースをダウンロードし、それらをKindleにインポートして読むことに慣れている。しかもAmazonが中国に進出前から輸入されたKindleがヘビーユーザーによって愛用されていた。

 ハードは使われるのに有料正規版コンテンツを買ってもらえない。そうした中でWeChat(微信)を擁するテンセント(騰訊)の「微信読書」が登場する。広告モデルによるコンテンツの無料配信を実現。おまけに中国ではWeChatを柱とするエコシステムができ上がっていた。

photo 中国の無料電子ブック利用者数の推移

 WeChatひとつでインスタントメッセンジャーだけでなく、各種支払いやコンテンツ視聴ほか、他社のサービスまで利用できる。2019年には2億人を超える中国人ユーザーを獲得した。テンセント以外のネット企業各社も自社アカウントを活用した無料コンテンツ提供を行いはじめた。それに比べてAmazonは中国においてアカウントを持っていてもメリットはほとんどなく、面倒くささが残った。

photo 中国市場では有力な読書アプリが乱立

 さらにハードウェアでは、当初はKindleを真似ようとした粗悪な製品ばかりでKindleの販売に影響は大きく与えなかったが、2019年にはXiaomiの電子ブックリーダー「小米多看電子書」が当時599元、当時のレートで日本円で1万円でお釣りがくる値段でリリースされた。それはKindleを明らかに意識した製品だった。またさらにディスプレイサイズの大きな製品や、カラーE-Inkを採用した製品、それにAndroid搭載製品も登場した。BOOXなどがそうだ。これにより、単に電子ブックを読むだけでなく、ニュースアプリを入れるなど、できることを増やしていった。

photo 評価の高い中国製リーダーが続々登場

 Kindleも新製品が出るたび改良されていて、数世代のモデル差があると 動作の軽快さが大きく異なる。しかしほぼ一貫して小さいサイズだったのも、中国人には好まれなかったという。もっと技術的に意欲的なモデルを投下していれば、中国のユーザーの心をつかみ続けた可能性はある。

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