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社内外に潜む“お邪魔虫”の正体 クラウド活用できない企業によくある4つの問題点(1/3 ページ)

» 2022年07月08日 09時00分 公開
[伊藤利樹ITmedia]

 クラウド活用が進まない企業は、どんな問題点を抱えているのか。“オンプレ思考”から脱却することの必要性を解説した前編に続き、後編では協力しているベンダーや社内の対立など、組織的な原因に起因するケースについて説明する。

前編:クラウド活用できない企業によくある4つの問題点 “脱オンプレ思考”の必要性

ベンダーとの関係が仇に クラウド化を外部に阻害されるケース

 ベンダーとの関係により、クラウド移行がしにくくなる場合も見受けられる。よくあるのは、懇意のハードウェアベンダーにシステム開発も任せている企業が、パートナーにクラウド導入を阻害され、うまく進められないケースだ。

 理由はシンプルで、ハードウェアベンダーからすれば、クラウド利用はハードの売り上げが消えるリスクになるからだ。実際に筆者が見た事例でも、ハードウェアベンダーがクラウド導入を阻害するケースはいくつもあった。

 例えば業務システムをクラウド移行しようとしていたある企業では、クラウドではミドルウェアの動作保証ができないことを理由に、オンプレを維持するよう勧められたことがあった。

 この企業は業務システムをオンプレサーバ上の仮想サーバで運用しており、移行に当たっては利用中のミドルウェアなどがクラウドでも利用できるか確認する必要があった。オンプレ環境を構築したのは懇意のハードウェアベンダーなので、この会社にも詳細を聞いていたが、ここでクラウド化にブレーキがかかった。

 懇意のハードウェアベンダーによると、移行する50件のシステムのうち、半分はクラウドで利用できるという。ただし、もう半分はミドルウェア等の動作保証がないので、オンプレでないと難しいらしい。

 動作保証がないものはオンプレミスとせざるを得ないので、25システムが動く仮想化基盤を購入する必要がある。もう半分はクラウドへ移行できるが、クラウドへの専用線の用意や移行環境作り、クラウド利用体制を整えるのはコストがかさむ。オンプレミスも25システム分の仮想化基盤だと割高だ。このままオンプレミスを維持すれば、コストは抑えられる──と持ち掛けてきたのだ。

 ただ、この説明には疑問もあった。オンプレミスであっても仮想サーバ上で動いているものが、クラウドの仮想サーバだと保証できない──というのは引っ掛かった。筆者もこの会社が使うミドルウェアなどに携わったわけではないので何ともいえないのだが。

 とはいえ、当時のユーザー企業も筆者も同じ疑問を抱えていたようだった。そこでハードウェアベンダーに「それならばクラウドでは貴社のパッケージソフトやミドルウェアは使わない」と伝えたところ、事態は好転。しばらくすると「クラウドには対応していない」と聞いていたはずのミドルウェアやパッケージソフトがクラウドに対応し、事なきを得た。

 もちろん、ハードウェアベンダーが自社の利益だけを考え、顧客を誘導したとは言い切れない。一方で、筆者が見てきた中では、ここで折れて「もう仕方ないから全部オンプレミスでやります」となってしまったケースもあった。こうなるとクラウド活用は遠のくので、長年の付き合いだったとしても、しがらみにとらわれず判断していく必要がある。

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