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3Dプリンターは“悪者”ではない──銃撃事件から考える「技術との適切な接し方」(1/3 ページ)

» 2022年07月12日 15時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 我々は技術が生み出した成果に囲まれて生きている。だから、良いことが起きた時も、悪いことが起きた時にも、技術が関わってきてしまう。

 7月8日、安倍晋三元首相が銃撃されて亡くなった。故人の冥福を心からお祈りする。この件も、いろいろな意味で技術と無縁ではない。彼を撃った銃も、銃撃に関しての情報も、すべて技術を介した存在である。

 我々は技術とどのような距離感で接すればいいのだろうか? 筆者なりの考えをまとめてみた。

3Dプリンターは悪者ではない

 安倍元首相は、背後から自作の銃で撃たれたとされている。

 憶測に基づく報道はあるが、どう自作されたものか、詳しいことは分からない。はっきりしているのは「自作の銃である」という点くらいだ。

 自作の銃である、という点から当初「3Dプリンターが使われたのでは」との予測もあったようだが、それがどうだったかは分からない。現実問題として、3Dプリンターで銃は作れる。だが、それはそこまで重要なことではない。

3Dプリンターのイメージ画像

 なぜなら、「銃弾を発射する」には火薬が必要だからだ。自作銃を作る上でよりクリティカルなのは、火薬を手に入れて銃弾を作ることである。

 また、銃を作る技術は3Dプリンター以外にもある。一定の技術を理解していて、加工技術を持っていれば、銃は作れてしまうものだ。

 3Dプリンターは新しいテクノロジーであり、それさえあれば簡単に銃が作れるように思える。だが、実際にはそこまで単純ではなく、必要な要素は多数ある。3Dプリンターも道具に過ぎないわけで、それを単純に否定したり非難したりするのは意味がない。分かりやすい技術を悪者にするのは簡単な話だが、自作銃1つとっても、実際には必要な要素が多数ある。

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