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ベールに包まれたトヨタ新型旗艦「クラウン」、EVや水素モデルは? 同社に聞いてみた

» 2022年07月19日 21時30分 公開
[山川晶之ITmedia]

  トヨタ自動車が7月15日に発表した、フラグシップ車「クラウン」の新モデル。これまでセダンが中心だったところ、16代目となる本モデルではSUV(多目的車)を含め4車種と拡大する。一方、同社はバッテリーEV(BEV)や水素、プラグインハイブリッドなども攻めていくと宣言する中、新型クラウンに動力源(パワートレイン)にBEVや水素などを採用するかは明らかにしなかった。これら新モデルがEVなどを採用する可能性はあるのだろうか。

グローバル車種になったクラウンは4車種で展開

 クラウンは、長らく国内専用車種として展開したが、今回の16代目はトヨタのフラグシップモデルとしてグローバル車種として開発。40の国と地域で展開するという。車種展開はセダンに加え、セダンとSUVを融合した「クロスオーバー」、スポーティな走りに特化したSUV「スポーツ」、余裕のある走りを持つ機能的なSUV「エステート」の4種類。まず、クロスオーバーから展開する。

 今回、詳細が明かされたクロスオーバーは、ハイブリッドとして、2.4Lの直列4気筒ターボエンジンとモーターを組み合わせた「eAxle」を採用。バッテリーは新開発のバイポーラ型ニッケル水素電池を使用する。2.5Lのシリーズパラレルハイブリッドシステムもそろえる。ただし、残りの3車種は動力源を含め、詳細はベールに包まれたままだ。

今回詳細が発表されたのはクロスオーバータイプ

バッテリーEVのクラウンは登場するのか

 クロスオーバーで採用される動力源を見ると、クラウンなどの高級モデルにはまだEVなどの影はなさそうに見える。発表会後の質疑応答で、新しい動力源に関する質問を受けたトヨタの中嶋裕樹氏は「クロスオーバーは、新しいハイブリッドを軸に展開していく。他のクラウンシリーズの動力源は現時点では詳細を申し上げられないが、地域やお客様のニーズに応じて、フラグシップとしてふさわしい動力源をその都度用意していく」と説明している。

 少しふわっとした回答だが、のちほど広報部に確認すると、今回発表されたクロスオーバーは、国内では新開発のハイブリッドを採用する一方で、国外では地域に応じて動力源を変える可能性があるとのこと。併せて、クロスオーバー以外の3車種についてはまだ詳細が明らかになっていないため、国内でもハイブリッド以外の動力源が採用される可能性がないわけではなさそうだ。

 トヨタは、カーボンニュートラルに対し、EV、水素を使った燃料電池、ハイブリッド、プラグインハイブリッドなど全方位に注力する戦略を掲げている。各国のエネルギー政策にはばらつきがあり、ガソリン車をすべてEVに置き換えるのが最適だとは限らない。そのため、複数の動力源を開発し、地域のニーズに合わせて適切なものをチョイスするのがカーボンニュートラルに対して効果的という考え方だ。そのため、同じ車種でも国によって動力源が異なる可能性があるわけだ。

 実はクラウンのスポーツタイプは、先述のバッテリーEV説明会にその姿があった。後部中央に置かれた赤いSUVがクラウンのスポーツタイプと酷似しているのだが、同社に確認すると「形は一緒」であると認めた。ただし、BEVとして出るかというと、先述の通り各国のエネルギー政策などの影響を受けるため、動力源の詳細については明らかにしなかった。

 15代で幕を閉じた徳川幕府になぞらえ、豊田章男社長が「明治維新」と紹介した16代目の新型クラウン。動力源も新時代のものを採用するのか注目したい。

2021年12月に開かれたバッテリーEV説明会で展示されていたクロスオーバーEV。形はクラウンの「スポーツ」と一緒だという

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