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iPhone 14で注目集める「スマホと衛星の“直接通信”」 急速に実用化が進む背景とは(1/3 ページ)

» 2022年09月13日 12時30分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 アップルの新しい「iPhone 14」シリーズで、衛星通信に対応し緊急時のSOSを発信できる機能が備わったことが話題となったが、携帯電話業界でスマートフォンによる衛星通信はいま非常にホットなテーマとなっている。なぜスマートフォンに衛星通信が必要とされており、どのようにしてその実現を目指しているのかを、さまざまな企業の取り組みから確認してみよう。

9月7日(現地時間)に発表された「iPhone 14」

新iPhoneで衛星通信を用いた緊急SOS発信が可能に

 米国時間の2022年9月7日にアップルは新製品発表会を実施、iPhoneの新機種「iPhone 14」シリーズを発表した。その内容は既報の通りで、4モデル全てが6インチを超える大画面化が図られたほか、上位モデルの「iPhone 14 Pro」シリーズはフロントカメラ部分がノッチからパンチホールへと構造が変化。さらに新しいプロセッサ「A16 Bionic」や、iPhoneでは初となる4800万画素のカメラを搭載するなど、機能・性能面で大きな変化があったことから話題となったようだ。

 だがそうした中でも、今回大きな注目を集めたのは衛星通信への対応ではないだろうか。iPhone 14シリーズは全機種に衛星と直接通信できる機能を搭載しており、それを用いて携帯電話がつながらない場所でも緊急時のSOSのメッセージを発信できる機能を搭載したのである。

新たに発表された「iPhone 14」シリーズでは、衛星通信を活用して緊急時にSOSのメッセージを発信できる仕組みが搭載された。ただし当初利用できるのは米国とカナダのみとなる

 衛星は地上から数千〜数万kmも離れた所を飛んでおり、その電波を受信するには通常、大型のアンテナなどを用意する必要がある。だが緊急時の利用が主体であるなど機能がある程度限定されているとはいえ、その電波を通常サイズのiPhoneで直接受け、通信できるようになったことには大きな驚きがあった。

 各種資料によると、アップルに衛星通信サービスを提供しているのは米国の衛星通信事業者であるGlobalstarと見られており、同社が米証券取引所に提出した文書によると、Globalstarが衛星通信で用いているバンド53/n53(2.4GHz帯)をパートナー企業であるアップルのセルラー対応デバイス(iPhone 14シリーズと見られる)に用いるとされている。実際iPhone 14シリーズの対応バンドを見ると、中国やロシア向けのモデルを除きいずれもバンド53/n53をサポートしていることから、その周波数帯を通じて衛星通信を実現しているのではないかと考えられる。

 だが実は、スマートフォンで衛星と直接接続して通信する仕組みを実現しようとしている企業がここ最近急増しており、携帯電話業界でもホットなテーマの1つとなっている。実際、iPhone 14シリーズの発表直前となる2022年9月6日には、中国のファーウェイ・テクノロジーズが新スマートフォン「HUAWEI Mate50」を発表。中国向けモデルでは衛星通信によるメッセージなどの送信ができる機能の搭載を打ち出しているし、グーグルの幹部がAndroidの次のバージョンで衛星通信への対応を進めているとSNSで言及し、話題となっている。

 なぜいまスマートフォンでの衛星通信が注目され、どのような取り組みが進められているのかを、これまでの動向から振り返ってみよう。

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