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iPhone 14で注目集める「スマホと衛星の“直接通信”」 急速に実用化が進む背景とは(3/3 ページ)

» 2022年09月13日 12時30分 公開
[佐野正弘ITmedia]
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端末側の課題を衛星側で解決する動きも

 だがどうやって、端末側の形を変えることなく衛星と直接通信できるようにしようとしているのだろうか。その解決策の一端を示しているのが楽天モバイルと、その親会社となる楽天グループが出資している米AST&Scienceが共同で進めている「スペースモバイル計画」である。

 この計画では、AST&Scienceが打ち上げる低軌道衛星から4Gの電波を射出し、地上のスマートフォンと直接接続して通話や通信を実現することを目指しているのだが、特徴的なのは打ち上げる衛星のサイズである。なぜならその衛星は10×10mと非常に大きく、面積の多くをアンテナが占めているという。つまり端末側ではなく衛星側のアンテナをより大型化することで、スマートフォン側のアンテナを変えることなく通信できるようにしようとしている訳だ。

 もちろんそれだけ大きなサイズの衛星を直接打ち上げることはできない。そこで打ち上げ予定の衛星は折り畳み式のアンテナを採用、閉じた状態で衛星を打ち上げた後、アンテナを開いて大型化する仕組みとなるようだ。ちなみに試験用の衛星の打ち上げは2022年の9月から10月頃を予定しているようなので、衛星通信の今後、さらには楽天モバイルの今後の事業計画を見据える上でも注目される所だ。

AST&Scienceが打ち上げを予定している試験衛星「BW3」は、開いた状態で10×10mという、非常に巨大なアンテナを搭載した衛星となっている。写真は「ワイヤレスジャパン2022」の楽天モバイル講演資料より

 ちなみに衛星通信に取り組んでいるのはスペースXやAST&Scienceだけでなく、日本に関する所でいえば日本電信電話(NTT)とスカパーJSATが2022年7月に合弁で設立した「Space Compass」や、ソフトバンクと協業している英国のOneWebなども、低軌道衛星を活用した通信サービスの実現に取り組んでいる。それだけ多くの企業が衛星通信に取り組むのは、5Gの次の世代となる携帯電話の通信規格「6G」で、空や宇宙でも通信できるようにするなど、より一層広範囲のエリアカバーが求められているためだ。

 もちろん現在のスマートフォンと同じ感覚で衛星通信が利用できるようになるには一層の技術進化が求められるだろうし、そもそも日本で実際にサービスを提供する上では、制度面などで検討が必要な要素も少なからずある。だが各社が積極的に衛星通信に取り組む様子を見るに、そうした時代が訪れるのもそう遠くないのかもしれない。

総務省「周波数再編アクションプラン(令和4年度版)(案)概要」より。国内でスマートフォンと衛星が直接通信できるサービスを提供するには、技術条件や免許手続きなど具体的な制度を議論して決めていく必要がある
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