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バスの置き去り、AIが監視 各社から相次ぎ登場 「人の注意力だけでは限界」

» 2022年10月05日 20時24分 公開
[ITmedia]

 送迎バスの車内に取り残された園児が熱中症で死亡した事件を受け、様々な企業が置き去りを防止するシステムの開発に乗り出した。開発企業の1社は「人の注意力のみを頼りに事故を防止するには限界がある」と指摘している。

 自動車電装品の製造販売を手掛けるTCI(大阪市淀川区)は3日、AIカメラで車内の人間を検知し、大音量のブザーで車外に知らせるシステムを発売した。エンジンが停止した1分後に起動して置き去りを予防する。

TCIの置き去り防止システム

 オプションとして光で周囲に人の存在を知らせる「ワイヤレスパトライト」や約60m離れた場所に設置できる遠隔ブザーも用意した。遠隔ブザーは職員室などへの設置を想定したという。

 価格は当初55万円を予定していたが、想定以上の問い合わせがあったため量産を決定。40万2000円(いずれも税別)に引き下げた。

最大4台のカメラを設置して車内の死角をなくす

 鈴木ソフトラボラトリー(静岡県浜松市)は、古いスマートフォンを活用して導入のハードルを下げる置き去り防止用ブザーアプリを開発した。iPhone 6s以降(2015年発売)で動作するという。

 アプリをインストールしたスマートフォンをバスの座席最後部に設置。バスのエンジンが止まるとAIが検知し、ブザーを鳴らし始める。ブザーを止めるには運転手が後方まで移動する必要があり、子供の見落としを自然に防げるという。

 また設置したスマートフォンに別のアプリを導入し、車内の様子を遠隔監視する機能を追加することも可能。この場合、保護者も映像を確認できるとしている。

鈴木ソフトラボラトリーのブザーアプリ。AIがエンジンの停止を検知する

 同社によると米国のスクールバスが搭載している安全装置を参考に開発したという。米国の場合はエンジンを切るとアラーム音が鳴り響き、後方のボタンを押さないと止まらない仕組みになっている。

 トイレの混雑状況を可視化するサービスで知られるバカン(東京都千代田区)も同様のアプローチで「VACAN PatoKids(β版)」を開発している。

 バスの前方にタブレットを取り付け、バス後部にはQRコードを印刷したものを設置する。エンジンが切れて一定の時間が経過するとタブレットからアラートが鳴り出し、運転手がバス後部に移動してスマートフォンでQRコードを読み取るまで止まらない。

車内後方に設置するのはQRコードのみ

 アラームを止めた後もタブレットは内蔵カメラで捉えた車内映像のAI解析を続け、人を確認した場合は管理者に通知を発信する。今後、実証実験を通じて機能のアップデートを進める。

 バカンは「政府主導で再発防止に向けたマニュアル策定などを検討する動きもあるが、人の注意力のみを頼りに事故を防止するには限界がある」と指摘。「21年8月に福岡で発生した事故の後も自治体から安全管理の徹底を求める連絡が出ていたが、再び事故は起きた。テクノロジーを活用して子供の安全を守る仕組みが必要」と話している。

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