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どうなる「1円スマホ」 動き出す公取委と“セット販売復活”を模索するキャリア(2/3 ページ)

» 2022年11月11日 13時00分 公開
[佐野正弘ITmedia]

事態解決に大きく動く公正取引委員会

 総務省は先の法改正に当たり「2年をめどに端末値引きを事実上根絶する」と、スマートフォンの大幅値引きの撲滅に強い意欲を示していただけに、法の隙を突いてこのような販売手法が生まれたことを強く問題視しているようだ。だが一連の値引き手法は電気通信事業法に触れていないので、総務省では対処のしようがないというのが現状である。

 端末値引きで生じた転売ヤーに関する問題についても、総務省は問題意識を持ちながらも現状はまだ関与に及び腰な様子だ。実際、総務省の有識者会議「競争ルールの検証に関するWG」の「報告書2022」を確認すると、転売ヤー問題に対しては携帯電話会社が「転売目的の購入の抑制のための自主的な対策」をして総務省に報告することが必要とするにとどまり、改善が見られなければ改めて措置を検討すると記述するにとどまっている。

総務省「競争ルールの検証に関するWG報告書2022」概要より。転売ヤー問題に対しては携帯各社の自主的な取り組みを求め、行政側が積極的に乗り出す様子はまだ見られない

 また一連の値引き措置が、携帯電話会社ではなく携帯各社のショップを運営する代理店側が、競争激化の末、独自に“赤字覚悟”で実施するケースも少なからずあるようだ。NTTドコモ代表取締役社長の井伊基之氏は2022年11月9日の決算説明会で、独占禁止法上「販売代理店に利益を捨ててまで(値引きを)しないようにとはいえるが、『いくらで売れ』とはいえない」と話し、過熱する市場環境に対して携帯電話会社側でできる対処には限界がある様子を見せている。

 そうしたことから現在の1円スマホと転売ヤーなどに関する問題への対処は非常に難しいと見られていたのだが、大きな動きを見せたのが公正取引委員会だ。同委員会は22年8月9日、携帯電話端末の廉価販売に関する緊急実態調査を実施すると発表。1円など極端な廉価販売が「通信料金と端末販売代金の分離下においては、不当廉売につながるおそれのある販売方法とも見られる」とし、販売代理店などへの実態調査を実施すると発表している。

公正取引委員会の報道発表より。2022年8月9日に極端な廉価販売の問題の指摘を受け、実態調査を進めることを明らかにしている

 さらに22年10月25日には、公正取引委員会が強制調査に乗り出し、不当廉売や携帯大手に優越的地位の乱用がないかどうか調査するとの報道が一部でなされている。それら報道によると、携帯大手と販売代理店の契約により実態を把握しにくい部分があることから、強制権限を行使しての調査をするに至ったようだ。

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