政府の規制によって一時は姿を消した、「一括1円」など極端に安い値段で販売されるスマートフォン。だが2021年の半ば頃から、再びスマートフォンの大幅値引きが多く見られるようになった。
その経緯について、詳細は「深刻化するスマホの転売問題 『転売ヤー』に隙を与えたのは誰なのか」を参照頂きたいが、一応簡単に振り返っておこう。この問題は2019年の電気通信事業法改正で、従来大幅値引きを実現していたスマートフォンと携帯電話回線のセット販売が禁止され、ユーザーの契約を“縛る”ことができなくなったことで、携帯各社による奪い合い競争が加速したことに端を発する。
法改正による競争激化、そして菅義偉前首相の政権下による料金引き下げによる業績悪化のダブルパンチに苦しむ携帯各社は、他社から顧客を奪う施策の1つとして、改正法に抵触しない新たなスマートフォンの大幅値引き手法を展開。スマートフォンの販売価格そのものを大幅に値引いて誰でも安価に買えるようにし、そこに他社から乗り換えたユーザーなどに対し、改正法上最大限の値引き額である2万円を追加することで「一括1円」などの激安価格を実現したのである。
だが端末の値引き額には限界もあり、高額な端末を1円で販売するのは難しい。そこで最近では、端末を分割払いで購入し、途中で返却することにより残債の支払いを免除、あるいは減額する、いわゆる「端末購入プログラム」を組み合わせることで「実質23円」といった価格を実現するケースもあるようだ。
だがこの値引き手法は、2万円の部分を除けば回線契約の影響を受けない、つまり回線契約をしなくてもスマートフォンだけを安い価格で購入できることにもつながってくる。そのことに目を付けた組織的な転売ヤーが大挙して大幅値引きされたスマートフォンを買い占めてしまうことが大きな問題となっている訳だ。
そしてもう1つ、スマートフォンの激安販売は値引きができる企業体力のある大手企業しか展開できないことから、小規模のMVNOは対抗するのが難しいという問題も抱えている。しかも大半のMVNOは月額料金が非常に安いサービスを提供していることから、MVNOの回線を契約した後、端末の大幅値引きを目当てに携帯大手の回線に短期間で乗り換える、いわゆる「ホッピング」という行為も増加して問題となっているようだ。
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