スマートフォンの大幅値引き販売が復活したことで、いわゆる「転売ヤー」による人気スマートフォンの買い占めが携帯電話業界で問題となっているが、現在の転売問題は以前とはかなり質が違う、非常に深刻なものとなっている。その背景と対処について考えてみたい。
NTTドコモが2022年6月より、顧客に対して購入したスマートフォンのパッケージへの記名や押印をするようになったことが報道され、話題となっているようだ。その理由は購入した端末の転売を防ぐためであるとされ、端末購入時の割引を受ける条件として名前の記入や押印する必要があるとされている。
こうした措置はもちろん、今まで存在しなかったものだ。とりわけ日本では箱も丁寧に取っておくユーザーも多いことから、SNSなどでは今回のNTTドコモの措置に反発する声も少なからず挙がっているようだ。
その背景にあるのは言うまでもなくスマートフォンの転売問題が深刻化していることだ。21年半ば頃より、携帯電話会社のショップ(キャリアショップ)や家電量販店などで、「一括1円」「実質23円」など、一時は姿を消していたスマートフォンの大幅値引きが復活してきたが、そこに目を付けたいわゆる「転売ヤー」が、値引きされたスマートフォンを買い占めてしまう事例が多発。本来販売したい顧客に端末を販売できなくなるとして問題となっているのだ。
実際、総務省の有識者会議「競争ルールの検証に関するWG」では、これまでにも店頭では転売ヤー問題がかなり深刻な状況にあるとの意見が何度か出ていた。それゆえ端末を単体で購入できるのは1日に1人1台に限定するなど、ショップ側で自衛策を講じているケースもあるようだが、本質的な問題の対処にはつながっていないのが現状といえる。
過去を振り返ると、スマートフォンの値引き販売は幾度となく過熱したことがあり、当時も転売はそれなりになされていたが、買い占めが起きるほど深刻な事態にはなっていなかった。これまでの経緯を振り返ると、事態の深刻化を招いたのは19年10月より施行された改正電気通信事業法にあるといえる。
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