それは法改正で苦しめられた、携帯電話会社の反動によるところが大きい。乗り換え障壁が極限まで低くなったことで携帯電話会社は顧客を抱え続けられなくなり獲得競争が激化した一方、携帯料金引き下げに積極的な菅氏が2021年9月末で首相を退任。携帯各社は行政主導による携帯料金引き下げで数百〜1000億円レベルの巨額損失を計上しているだけに、菅氏によるプレッシャーがなくなったことから再び端末値引きによる競争が加速することとなったのである。
もちろん既に法律でセット販売は禁止されているが、物販での値引きに電気通信事業法の影響は及ばないし、従来の商習慣の影響から、現在もスマートフォンを購入する際は回線契約が必要と思っている消費者が多い。そこで携帯各社が取ったのが、スマートフォン自体の販売価格を直接値引くという新たな手法である。
具体的には端末の販売価格自体を大幅に引き下げ、誰でも大幅値引きでスマートフォンを購入できるようにし、それに加えて番号ポータビリティで他社から乗り換えた人に向けた、改正法の範囲内での割引などを追加。これによって規制の範囲内で「一括1円」という端末価格を実現し、回線契約の呼び水とした訳だ。
つまり現在の値引きは、端末を単体で購入できる消費者が少ないことを前提としたもので、知識を持った人に端末だけを激安で購入されてしまい、収益の基盤となる回線契約が残らないという大きなリスクも抱えている。そのリスクを的確に突いたのが転売ヤーだった訳だ。
セット販売が禁止されショップ側が端末の単体販売を拒否できず、しかも回線契約の“縛り”がなくなったことで短期間で乗り換えや解約がし放題という状況の中で、スマートフォンが大幅値引きで販売されていることは転売ヤーにとってメリットしかない。そこで値引きされた人気のスマートフォンだけを単体で購入、あるいは事前に安価なサービスを契約し、短期間で乗り換える「ホッピング」を活用して割引を全額適用して購入するなどして、人気のスマートフォンを安価に調達、転売する行為が横行するようになったのである。
もちろん、安価な料金プランの増加でホッピングがしやすくなったこと、さらにはフリマアプリの普及など以前よりは転売しやすい環境が整ったことなどもあり、個人による転売も活発になっている。そちらも問題ではあるのだが、個人で調達できる端末の数には限界もあるため、それだけで問題がここまで大きくなるとは考えにくい。
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