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深刻化するスマホの転売問題 「転売ヤー」に隙を与えたのは誰なのか(4/4 ページ)

» 2022年06月14日 14時00分 公開
[佐野正弘ITmedia]
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円安と組織的な「転売ヤー」の存在

 より問題になっているのは組織的な転売ヤーの存在であろう。日本でスマートフォンを安価に購入できることに目を付け、日本で調達した端末を海外で転売し、内外価格差を利用して利益を得るというビジネスを目的としている。そして利益を最大化するには端末を大量調達する必要があることから、多数の人員を集めてショップに開店前から並ばせ、値引き対象のスマートフォンを早々に買い占めてしまうことで問題を深刻化させている訳だ。

 こうした転売ヤー問題の深刻化を受けて携帯各社だけでなく行政も問題対処に乗り出すようになり、競争ルールの検証に関するWGの第32回会合では転売ヤー問題に関する具体的な議論もなされていたようだ。ただここまで端末購入の障壁が低くなってしまっている現状、事業者側が本質的な対処を打ち出すのはなかなか難しく、冒頭のNTTドコモの事例に関しても、早速書いた名前を消す方法などがネット上で出回っている状況だ。

 転売問題の深刻化は携帯各社の端末大幅値引きが契機となっただけに、「携帯電話会社の大幅値引きを止めさせれば問題は解決するのでは」という意見もよくみかける。だがそもそも今の日本は急速な円安が進んだことで、諸外国から比べるとスマートフォンを非常に安い値段で買える環境となっている。たとえ大幅値引きを止めたとしても、内外価格差によって利益を得る国際的な転売ヤーが姿を消すとは考えにくく、解決にはより本質的な対処が求められるだろう。

 そもそも現在の市場環境を作り上げたのは先の法改正にある訳で、理想的な競争環境を追及するあまり、転売などのリスクを軽視して乗り換え障壁を大幅に引き下げ、転売ヤーが活動しやすい環境を作り上げてしまった行政側の判断にも問題があったのではないだろうか。現実を直視し本質的な転売防止に踏み切るには、一定の規制を緩和し端末と回線のセット販売を復活させるなど、かなり踏み込んだ策が求められるのではないかと筆者は考える。

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