「シンセサイザー」という言葉を聞いて何を連想するだろうか。70年代にロック少年だった筆者は、モーグ博士、キース・エマーソン、冨田勲、リック・ウエイクマンといった名前を思い浮かべる。だが、もう一つ、記憶の片隅に忘れられない存在がある。
シンセやアンプ類でおなじみのメーカー、ローランドとギター製造の富士弦楽器(フジゲン)が開発したギター・シンセサイザー(シンセ)「GR-500/GS-500」だ。
シンセというと鍵盤楽器というのが定番だが、1977年5月に日本の楽器メーカーから、ギターとシンセを組み合わせた世界初の楽器が登場した。本稿では、GR-500/GS-500登場当時、デモンストレーターとして活躍していたギタリストの谷川史郎氏に、この楽器について語ってもらった。
また、当時、ローランドでGR-500/GS-500の開発とマーケティングに携わった植野アイク氏にも開発秘話などを聞いた。ちなみに、GR-500はシンセの音源ユニットで、GS-500はギター本体(コントローラー)の商品名を指す。
ギター少年だった筆者は、変幻自在な音色を奏でるシンセへの憧れなのか、あるいはコンプレックスなのか、なんともいえない感情を抱きつつ、EL&PやYESといったプログレッシブ・ロックのレコード盤に針を落としていた。
そんな少年が「ギター・シンセ」というフレーズに反応しないわけはない。ギターでキース・エマーソンや冨田勲のような音が出せるのだ。とはいうものの、当時のセット価格が33万円。アルバイトの時給が300円代だった時代だ。高校生ごときにおいそれと買える代物ではない。
現在のデジタル全盛の時代では考えられないことだが、ギターでシンセの音が出せるというのは画期的なできごとだった。NHKの夜7時のニュースで「世界初」と紹介されたのを覚えている。「ストラディバリウスの音が出るエレキギター」といった紹介のされ方だったように記憶している。実際は、ストラディバリウスとは似ても似つかぬ音なのだが、そんなキャッチコピーを冠したくなるほどに革新的な楽器だったのだ。
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