日本国内で「GAFA」に言及が始まったのは、2016年8月に日経新聞の解説記事「ガーファを知ってますか」あたりが最初であろう。同年9月に公表された経産省「第四次産業革命に向けた横断的制度研究会報告書」にも
“デジタル市場で急成長を遂げたGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)のようなプラットフォーマーは、(中略)その競争優位が固定され、支配的地位となっている可能性が懸念される”
との言及が見られる。このあたりから次第に政府の中でも、国外のデジタルプラットフォーマーを「脅威」と見なすようになったようだ。
こうした脅威は、GAFAの独占的支配により、国内のサービスがうまくいかない、成長が阻害される、利益が吸い上げられるといったビジネス文脈のほか、個人情報やAI、クラウドサービスがGAFAに集中しているがそれで大丈夫かといった、知識知的財産文脈がある。市場原理による競争が起こらない場合には、GAFAに対してなんらかの規制や国による介入が必要なのではないか、という話が水面下で動き始めた。
一方でGAFAを通じてサービスを受ける消費者側からすれば、彼らの独占性から来る具体的なデメリットはあまりなく、むしろ大量の消費者を味方に付けて支持を得ているが故に、消費者保護には熱心であるという側面がある。それがゆえに、事業者泣かせであるとの評価にもなってくる。
デジタルプラットフォーマーの問題を語るには、それらを利用してビジネスを行なう事業者の保護と、GAFAを通じてサービスや商品提供を受ける消費者保護の両方のバランスで見ていく必要がある。
デジタルプラットフォーマーの透明性や公平性の向上を測るため、令和2年に「デジタルプラットフォーム取引透明化法」が制定された。所管は経済産業省である。これはデジタルプラットフォーマーに対して、定期的に運営状況の報告を義務付け、大臣が評価を行なうというものである。その前には、関係者や学識経験者からなる「モニタリング会合」から意見を聴取し、それを参考に組み立てられるという流れだ。
法律制定後の令和3年度に、対象となるプラットフォーマーから初めての定期報告書が上がってきた。対象となるのは、総合物販オンラインモールとして、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの3事業、アプリストアとして米AppleのApp Store、米GoogleのGoogle Playストアの2事業である。
これをレビューしたドラフトが2022年に上がってきて、それに対してのパブリックコメントの募集が始まっている。期限は12月11日いっぱいとなっている。
特定デジタルプラットフォーム提供者に期待される取組みとは、以下のようになっている。
これらに対してどのように取り組んだか、各事業者がレポートを上げてくるわけだが、ものすごい量だ。Amazon93ページ、楽天26ページ、ヤフー60ページ、Google19ページ、Appleに至っては255ページという超大作である。法に基づいてこれを毎年出せという話だから、大変である。
これに対して評価し、今後の方向性として以下の3つが示されている。
1は、本評価を踏まえて継続的に自主的な運営改善をやってねという話、2は経済や社会情勢に応じて、経済産業大臣が求める指針はどんどん見直されますよという話、3はこの法で対応が難しいものについては、強制力のある介入をしていくかもしれませんよ、という話である。
ただ3については、まだ法律が動いて初めてのレポートが上がってきて、そのレビューも初めて出るという段階で、もう強制力のある介入、いわゆる法規制を検討するというのはちょっと早すぎるだろう。まだレビューの結果を踏まえて各事業者の自主的改善も行なわれていない。つまり、まだ1回転していない。この法律は独占禁止法のサブセット的に機能するものと想像するが、これではサブセットどころか、第2の独占禁止法になろうとしているという懸念も出てくる。
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