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返品・交換がビジネスチャンスに? アメリカで体験した「Happy Returns」のUXがナイスアイデアシリコンバレーから見た風景(1/3 ページ)

» 2022年12月08日 15時30分 公開
[五島正浩ITmedia]

 シリコンバレーのIT企業に勤務する五島正浩さんが見た現地のテック動向を紹介する連載「シリコンバレーから見た風景」。第21回は、デメリットが大きそうなネットショッピングの返品・交換をビジネスチャンスにした企業を紹介します。


 こんにちは。シリコンバレーではコロナ禍のニュースはほとんどなくなり、マスクをしている人も少なくなりました。経済が再開したというフェーズも終わり、コロナ禍以前に戻った感じです。街には車や人があふれています。私の勤務先はリモートワークですが、週に何度か出社するようになりました。またレストランで食事を楽しむ機会も増えました。

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 こうなると外出することに意識が向いてきて、衣類など身に着けるものを買うことが増えてきます。昔はショッピングモールに出向いて買い物していましたが、最近ほぼネットショッピング。というのもアメリカでは返品・交換が簡単にできるので、衣類なども気軽に購入できるのです。

 普通に考えれば、返品・交換が簡単と言っても面倒な作業が伴いますし、オンラインショップ側もコスト増になりかねません。今回はオンラインストアの裏側で、返品をシンプルにするサービスを提供しているHappy Returnsを紹介します。

きっかけは帽子の購入でした

 少し前からInstagramの広告で「Melin」というブランドの帽子を見かけるようになりました。なかなかよさそうなデザインだったのでサイトにアクセスして確認してみたところ、帽子としては少し値段が高め。悩んだのですが、初回購入は10%オフということもあり早速買ってみることにしました。

 通常この手の帽子はワンサイズでサイズが選べず少し小さく感じることが多いのですが、Melinのは大きめのサイズが用意されていたので今回はこちらを購入。

 実際に届いて手にしてみると質感や細かなデザインも期待通り良くできていてすぐに気に入りました。しかし2回ほど使ってみたところ、サイズが少し大きいため眼鏡と帽子が干渉して、眼鏡の位置がずれてしまうのが不快ということに気付きました。やはりレギュラーサイズの方が良かったのかも。

photo 購入したMelinの帽子。サイズが合わなかった

 Melinの返品・交換ポリシーによると、30日間無料で対応するが新品未使用であることが条件となっています。ダメかもしれないと思いながら正直に「既に2回使ってしまったけどサイズ交換可能か?」と問い合わせたところ、すぐにOKとの返事が来ました。また同時に「Happy Returns」のQRコードが送られて来ました。

 後はHappy Returnsの指示に従って「Happy Return Bar」と呼ばれる窓口に商品を持ち込んでQRコードを見せればOK。梱包(こんぽう)や返送用ラベルは不要とのこと。あっという間に返送処理が始まりました。

 通常、オンラインストアで返品処理をする場合は、返送用ラベルを自分で印刷し、商品を箱に詰め込み、指定された配送業者の営業所に持ち込むのですが、この梱包作業やラベル印刷は結構面倒です。

 最近はプリンタをめったに使わないのでインク切れだったり紙がなかったり。また期待したのと違う商品だった場合はがっかり感も相まってとてもおっくうな気分になります。箱やラベルのことを考えずとも、商品だけ持ち込めば後は全てHappy Returnsにお任せできるのはかなりうれしいです。

 箱やラベル不要でQRコードを見せるだけの返品といえばAmazon.comも一部で対応。宅配業者UPSの店舗もしくはWholeFoodsなどのAmazon系ストアで受け付けています。Happy Returnsは、Amazon.comを使わない直営オンラインストアでも同様の返品サービスを組み込めるところが違います。Melin以外にもLevi’s、Everlane、Rothy’sなどの人気アパレルブランドの直営オンライストアの裏側でHappy Returnsが使われているそうです。

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