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忘年会シーズンに気を付けること──尼崎USBメモリ紛失事案の報告書から学ぶ(2/3 ページ)

» 2022年12月16日 12時00分 公開
[谷井将人ITmedia]

6月21日 USBメモリをなくした日

 20年度には市政情報センター内に設置していた給付金コールセンターだが、諸事情により21年度以降は江坂コールセンター(大阪府吹田市)に移動することになった。コールセンターでは最新の情報を基に業務を行うため、データ更新作業が必要になる。

 江坂コールセンターは市政情報が登録されたシステムとは隔離されているため、最新情報に更新するには、市政情報センターから江坂コールセンターに手で情報を運ぶ必要があった。

 22年6月16日、尼崎市と市政情報センターはデータ更新業務について打ち合わせを行った。そこではスケジュールやシステムの操作方法などを確認。データの具体的な運搬方法は議論されなかった。

 USBメモリを持ち運ぶことになったA氏は21日午後5時ごろ。市政情報センター3階の給付金サーバからUSBメモリに情報を保存。執務室ではその他更新作業に必要なデータを別のUSBメモリに保存した。パスワードや暗号化処理は施していた。

 A氏はそのUSBメモリを私用カバンの内ポケットに入れて電車で江坂コールセンターに移動。午後6時には到着し、B氏や営業、I社従業員らとともにデータ更新作業や動作確認などを始めた。

 午後7時30分ごろには全ての作業が終了した。

 ここでB氏と営業が、A氏とI社従業員を飲みに誘った。2人は誘いに乗り、江坂駅周辺の居酒屋へ行くことになった。

 A氏はデータを削除していないUSBメモリ2本を私用カバンの内ポケットに入れて移動。飲み会は午後10時30分まで続いた。

 そこですっかり酔ってしまったA氏は帰り道、自宅とは全く関係ない建物内で眠ってしまった。

 日が変わり22日午前3時ごろ。A氏は目を覚まして自宅まで歩いて帰宅。このときにカバンを置き忘れていた。

 午前9時ごろ、A氏は市政情報センターに常駐しているBIPROGY社員に欠勤する旨を報告した。カバンの紛失にも気づいていたが、探せば見つかると思い報告はしなかった。

 交番にカバンの紛失届を出したうえで捜索したが結局見つけられず、午後2時にはBIPROGY社員に紛失を報告し、午後4時には尼崎市にもその事実が伝わった。

 A氏と警察の捜索で、24日にはカバンが見つかり、USBや市政情報センターへの入館証、財布などがなくなっていないことが分かった。ダークウェブなどへの情報流出も見つかっていない。

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